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【石の力】もし芸人に不思議な力があったら【開放】

1 :名無しさん:04/11/04 02:28:53
前スレ
http://tv6.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1080226867/

まとめサイト
http://risus.ifdef.jp/index.htm

・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってます
・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨

2 :名無しさん:04/11/04 02:29:43
(書き手さん用)
・石や能力はなるべく被らない様に(番外編ならば多少被ってもOK)
・文中で新たな能力が出た場合は、必ず最後に記すこと
・文の最初にレス番号をつけて、何処からの続きなのか明記すること
・微妙な表現(痛々しい場面など)が出る場合は、前もって表記してください
・初投下の人はまとめサイトなど参考にして雰囲気とか掴んでみたらいいかも
・設定は強すぎたりとかは無しで。条件などを付けてバランス良く
・これどうよ?とか思ったりしたら、聞いてみたりしてください
(書きたい芸人さんや力などが既出かとか。)
・設定の形式は↓な感じで
例)
井戸田潤(スピードワゴン)
石・・・・シトリン←宝石言葉が「勇気」や「陽気さ」など太陽っぽい
能力・・・・自分が納得できないことが起こったとき(例えば仲間が自分を庇って倒れるなど)「アタシ認めないよ!」でそれが起こる前まで時間を戻せる。
    体力が満タン状態なら「無かったこと」にもできる(庇って倒れても傷を負っていないとか)くらい強力。
条件・・・・ものすごくパワーを使うので一日に何度も使えない。数回が限度。
    パワーが尽きる(使いすぎる)と発動しない。または戻る時間が極端に短くなる。
    そして自分が本当に納得していない事ではないと力が発動できない。
    (例えばトランプで自分の手札が悪くて負ける→敗因を納得しているので発動しない
     こっちが勝ってるはずなのにイカサマで負ける→納得できないので発動して勝負の前に時間が戻せる)

3 :名無しさん:04/11/04 02:30:30
以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能。
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。
・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている(ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られたかりそめの魂であり、
 石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。
・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。
・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「白いユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。) 

4 :名無しさん:04/11/04 02:31:03
以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能。
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。
・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている(ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られたかりそめの魂であり、
 石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。
・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。
・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「白いユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。) 


5 :名無しさん:04/11/04 02:33:39
現在の書き手さん ()内は出演中の芸人、?は名前未登場芸人、「」は登場予定
本編
オデンヌ ◆RpN7JISHH. さん(ダンディ坂野、スピードワゴン、中川家、「長井秀和」、「劇団ひとり」)
じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ さん(CUBE)
619 ◆QiI3kW9CIA さん(品川庄司)
カンニング編 ◆8Y4t9xw7Nw さん(カンニング)
156=421 ◆SparrowTBE さん(麒麟、いつもここから、友近)

番外編
現在執筆中 ◆n28wRDMeV2 さん(ダンディ坂野、あばれヌンチャク、ビッキーズ、スピードワゴン、おぎやはぎ、ダウンタウン浜田)
ピン芸人@692 ◆LlJv4hNCJI さん(長井秀和、劇団ひとり、波田陽区)

6 :名無しさん:04/11/04 02:34:44
登場芸人  番外編登場芸人、本編の芸人の能力等の詳細はまとめサイトで
()内は石
本編
・あばれヌンチャク 斉藤(タンザナイト)/竹内(ブルーゴールドストーン)
・アンガールズ 田中(ハウライト)/山根(アベンチュリン)
・アンジャッシュ 児島(オパール)/渡部(水晶(透明))
・アンタッチャブル 山崎(シェルオパール)/柴田(ファイアオパール)
・いつもここから 山田(グリーンフローライト)/菊地(ツァボライト、アイオライト)
・江戸むらさき 野村(バイオレット・サファイア(甲))/磯山(バイオレット・サファイア(乙))
・エレキコミック 今立(ウレクサイト)/谷井(ピンクトルマリン)
・おぎやはぎ 小木(トルマリン)/矢作(ラリマー)
・カンニング 竹山(ルビー)/中島(サファイヤ) 
・CUBE 石川(ウォーターメロン・トルマリン)/和田(?)
・麒麟 川島(黒水晶)/田村(白水晶)
・くりぃむしちゅー 有田(パイライト)/上田(ホワイトカルサイト)
・号泣 赤岡(黒珊瑚)/島田(白珊瑚、虫入り琥珀)
・さくらんぼブービー 鍛冶(オキニス)/木村(カーネリアン)
・品川庄司 品川(ラブラドライト)/庄司(モルダヴァイド)
・スピードワゴン 井戸田(シトリン)/小沢(アパタイト)
・ダンディ坂野(花崗岩)
・友近(レッドベリル)
・中川家 剛(キャッツアイ)/礼二(アレキサンドライト)
・ドランクドラゴン 塚地(ヘマタイト)/鈴木(ジャスパー) 
・南野やじ(クリソプレース)
・?("Violet Sapphire")(インカローズ)
・?(エレキ短編)(モルダバイト)

7 :名無しさん:04/11/04 02:35:53
設定のみ投下済みの芸人、石(スルー可)
()内は石
・三拍子 高倉(アポフィライト)
・テツandトモ テツ(トパーズ)/トモ(アクアマリン)
・東京03 飯塚(アウイナイト)/豊本(ブルータイガーアイ)/角田(ラピスラズリ)
・バナナマン 設楽(ソーダライト)/日村(スモーキークォーツ)
・ヒロシ(カンラン石)
・ラーメンズ 片桐(カオリナイト)/小林(トルコ石)

以上です。これら以外は以前の(<<808、809)で。
ちなみにあばれヌンチャクと南野やじは「やっくんを止めろ!」より、です。

8 :名無しさん:04/11/04 02:44:42
以上、テンプレ作成&修正した方お疲れ様でした。
何とか立ててみたのですが、初だったもので一箇所ミスってしまいました。

これでも良かったら使って下さい。

9 :名無しさん:04/11/04 04:04:08
乙です!全然大丈夫ですよ!
初スレ立ておめ

10 :名無しさん:04/11/04 15:49:31
一乙カレー

11 :名無しさん:04/11/04 17:17:03
乙!

12 :名無しさん:04/11/04 18:15:32
乙です!

13 :名無しさん:04/11/04 18:34:39
リアルタイムで乙って言ってもらえて感動…
書き手の皆さんガンガです狽пi・∞・)
読み手の方も応援頑張って下さいなw

ちょっと思ったのですが…
向こう幾つまで埋めてからこっちに移動するか決めた方が良いのでは?

14 :名無しさん:04/11/04 22:36:55
お疲れ様です!!
ありがとうございます

15 :名無しさん:04/11/05 19:35:43
>>13
微妙ですね。何気に埋めは↓と禁止されているし、
かと言って落ちるのを待つのも何となく怖いような…。前スレはもうだいぶ下の方にあるんで、
新スレに書くように決めれば自然に落ちるんじゃないかなぁ、と思ったりしますが…。

http://www.2ch.net/accuse2.html
6 荒しの定義  何を以って荒しと認定するかについての問い合わせには基本的にお答えしません。
ただし自動的にスクリプトで判断しているわけではありません。
くれぐれもコピー&ペーストを執拗に繰り返したり、同内容の繰り返しを執拗に張りつけたり、
可読性を損なうことを目的に書き込みを繰り返したりしないように注意してください。次項にもありますが、
容赦なく対処します。保守荒らしや埋め立て、1000取りも無駄にサーバリソースを消費する行為なので、禁止します。

16 :名無しさん:04/11/06 12:17:47
保守

17 :名無しさん:04/11/06 12:37:50
前スレ
関西vs関東若手漫才対決勃発殺人事件前編予告編
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1080226867/

18 :名無しさん:04/11/06 12:39:37
>13
>15
★ 倉庫格納 ★ 
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku/1047244816/
ここに依頼するのも手だと思います。

19 :名無しさん:04/11/06 12:59:30
さっき初めてこのスレを見つけたけど、すごく面白くてびっくり。
何だか読んでてわくわくするね

20 :名無しさん:04/11/07 11:25:26
とりあえず、前スレよりはあげておきます。

21 :お試し期間中。:04/11/07 16:56:11
アンジャッシュ渡部→今までの能力+相手の精神に直接入り込んで語りかけることが出来る。
ただし、相当な精神力を要する為使用後回復に丸一日かかる。
インジョンは黒い石の効果で前レス915・916の効果ということにしておいてください。
アンタッチャブル・アンガールズは今までに出ている設定でお送りします…




男は先程から楽屋の前で聞き耳を立て、室内の様子を窺っていた。
中からは撮影本番前の緊張感の中、最後のネタ合わせをしている芸人達の声が聞こえてくる。
スタッフとしてこのスタジオに送り込まれた男の使命は、
ある石に眠る悪意を目覚めさせる切欠を作る事。
事前に黒い欠片の影響を受けた石を持たせた芸人は既に楽屋に潜り込ませてある。
後は自分がいつ合図を送るか、それだけだ…


本番前の騒々しい楽屋の彼方此方で芸人達はネタ合わせをしている。
「…いい加減にしろっ!」「「ありがとう御座いましたー…」」
「よっし。時間はピッタリだから、これで本番もいけるだろ」
「此処もう少し直した方が良いんじゃね?」
まだ駆け出しの若手芸人達が最後の最後まで念入りに打ち合わせをしている中、
部屋の隅のほうに腰掛けて室内をじっと観察しているトリオが居た。
社交的なイメージの芸人なだけに、彼らを知っている者は少なからず違和を覚えていたが、
もしかしたら腹の調子が悪いだけかもしれないと、特に声を掛ける様な事もしなかった。

22 :お試し期間中。:04/11/07 16:56:48
「あいつらどうしたのかな。三人揃って何か暗そうだけど…」
部屋の隅の三人組が気になる様子のアンジャッシュ児嶋が相方にポツリと言った。
「さあな。何か悪いモンでも食ったんじゃねーの?」
俺に訊かれてもな、と言った様子で渡部は適当に返事をする。
「それよりも俺が気になるのはあっちだよ…」
渡部の視線の先には傍から見て一目で判るほどキレかけているアンタッチャブル柴田と、
申し訳無さそうに縮こまりながらネタ合わせをしている相方山崎の姿があった。
「また山崎やっちゃった?有田さん…かな」「…だろうね。」
山崎がくりぃむしちゅーの有田と仲が良いのは有名な話。
酷い時には仕事よりも有田との約束を優先させたこともあったらしい。
本番が迫っている為に、遅刻した山崎への柴田からのお叱りは後回しにされたようだ。
営業でやり慣れているネタを、番組用に時間調整している。
その近くで後輩のCUBEがネタ合わせしているのも見えた。
久しぶりのTV出演に張り切っている様だった。
「俺らもちゃんとやっておかないとな」
ああ、と児嶋は短い返事をし、ネタ帳を広げている渡部の方へ向き直った。

ドアがノックされ、芸人達は一斉に其方へ視線を向ける。
ガチャリと楽屋のドアが開けられ、スタッフらしき男が顔を覗かせた。
「本番20分前でーす」
静まり返った楽屋に響いた声に、芸人達が了解の返事をしようと口を開きかけた瞬間、
突如床がグラリと揺れた。地震のようにグラグラと大きな揺れが続く。
(石が…反応している…?)最近芸人の間で出回っている不思議な能力を持った石。
渡部はペンダントにして持ち歩いている自分の石に手をやった。
触れてみるとそれは自分が能力を発動させていないにも拘らず、
じわりじわりと厭な波動を発していた。
(この揺れは…誰かが能力を使っているのか…)渡部は室内の芸人達の動きに目を凝らした。
それが普通の地震ではなかったと気づいた者は自分以外にも居たようだ。
揺れが収まった後、児嶋をはじめ渡部が知っている石の能力者達が室内を厳しい目で見回していた。

23 :お試し期間中。:04/11/07 16:57:49
先程の男が部屋の入り口で叫んでいる。
「スタジオのセットが崩れて作業していたスタッフが足を挟まれました!!人手が足りないんです…
手を貸して頂ける方は来て下さい!!次の揺れが来る前にどうにかしないと危ないんです!!」
こうすれば力を感じた者は能力者を止める為にこの部屋に残るだろう…
その為に能力を使う時にワザと他の石へ働き掛けるように仕向けたのだから。
男は我ながら素晴らしい作戦だと、心の中でほくそ笑んだ。
駆け出していく若手芸人達を追いかける振りをして、室内から見えない位置に隠れる。
そっと中を窺うと、残ったのはアンジャッシュ、アンタッチャブル、アンガールズの3組。
能力者である彼等は一斉に部屋の隅の方を睨み付けていた。

「あんた達が…やったのか?」柴田が恐る恐る問いかける。
其処にはニヤリと不敵な笑みを浮かべているインスタントジョンソンの三人が立っていた。
渡辺の右手には黒と緑の混ざる濁った光を放つアマゾナイト。
暫く沈黙が続いた。
(何故この三人が黒いユニットに?)渡部は突然のことに困惑する。
「スギ、ゆーぞー。この石すごいっしょ?もっかい地震創ろうか?」
沈黙を破ったのは渡辺の自慢げで、無邪気そうな言葉。
「別に良いけどさ、それやっちゃうとスタッフの人が危ないんじゃなかったっけ?」
杉山が、冗談でもツッコミとは言えないような返事をした。
「そっかー…関係ない人やっちゃうと怒られるからね。止めとくよ」
残念そうに言うと石を持った右手をぎゅっと握る。

24 :お試し期間中。:04/11/07 16:58:31
あまりにも普通な調子で繰り広げられる普通じゃない会話に、6人は呆気に取られていた。
「あんまりのんびりしてる暇ないよ。ほら、早く早く」佐藤が後ろから渡辺を急かす。
「わかってるって、全員倒しちゃえばいいんでしょ?スギ、準備できたよ」
渡辺の言葉に杉山が無言のまま一歩前へ出る。
胸元に下げた石からは紅色と黒の混じった光が放たれ、杉山の全身を包んでいた。
その手には渡辺の能力で創り出した金属バットが握られている。
「やる気ならこっちも無抵抗って訳にはいかないな…」
三人に最も近い位置に居た児嶋は、渡部に目で合図を送ると袖を捲って臨戦態勢をとった。
「金属バットだなんて、ベタな凶器だなぁオイ」
完全に自分の問いかけを無視された柴田が、つまらなそうに呟いた。

「なんか、ヤル気みたいですね」 「やるしかないみたいですよ、皆さん」
コントのときの空手の構えをしているアンガールズの二人に、渡部が後ろから声を潜めて言った。
「彼らの能力がまだ良く判らないから、慎重に行きたい。
君達の能力は彼らを傷つけずに石を奪うのに必要だから、ちょっと下がっていて欲しいんだ」
成る程、と納得した二人は構えを解いて一歩後ろに下がる。
渡部はあの計算しつくされたコントを創り出す頭脳をフル回転させ、この非常事態を
どう切り抜けるかを考える。(先ずは三人の能力を知るのが先決だ…児嶋、頼んだぞ)
「あんまり考えてる暇なんてないんじゃないの〜?」
佐藤の声とともに、杉山が一番近い位置に居る児嶋に向かって駆け出した。
「「児嶋さん危ない!!」」アンタッチャブルの二人が揃って叫んだのとほぼ同時に、
杉山のバットが児嶋目掛けて振り下ろされる。
「…え?」児嶋は何故かその攻撃を避けようともせず、後ろを振り向いた。

25 :お試し期間中。:04/11/07 17:00:14
メキ、と妙な音がした。確かに自分の攻撃は当たったと杉山は確信していた。
だが手応えがなかった。目の前には殴った筈の児嶋が突っ立っている。
児嶋の立っていた床にバットがめり込んでいるだけで、本人には全くダメージが無い。
「そーいや、児嶋さんの石って…」山崎が思い出したように手を叩く。
「なんか、無駄に叫んじゃったみたい」柴田は安心して苦笑いを浮かべた。
「馬鹿にしやがって…くそっ!」拉げたバットを床に残し、杉山が児嶋に殴りかかる。
「え?」再び驚いた表情をした児嶋の腹をすり抜けた杉山の拳は、近くにあった机にめり込んだ。
「なにアレ!お化けみたい!!」後ろから見ていた渡辺が驚きの声を上げる。
「キャラが薄いからって、やりすぎじゃ〜ん」
児嶋がムッとした表情で佐藤を見遣りほっとけ、と呟いた。
(スギは肉体強化…成る程ね。後はゆーぞーだけか。一体どんな能力を…)
そのやり取りを見ていた渡部は、打開策を必死に考える。

「このっ!」児嶋は隙を突いて杉山のわき腹を殴りつけたが、
「いっ…てぇ」強化された体にはダメージを与えられず逆に腕を痛めてしまった。
机から拳を引き抜いた杉山が、躍起になって次々と児嶋に殴り掛かる。
石の能力で避け続けてはいるものの、攻撃向きな能力ではないため児嶋は反撃が出来ない。
「ったく…どうすりゃいいんだよ!殴っても全然効いてねーみたいだし
…避けてばっかじゃ何も出来ねーよっ!」傍から見ても児嶋の著しい体力消費は明らかだった。
杉山の方は疲れも見せず、まるで無限にエネルギーが湧き出ているかのような動きを見せる。
「児嶋さんっ!!俺も手伝います!!」見兼ねて柴田が石を掲げた。
「悪ぃな柴田、助かるよ」
柴田の石から放たれた赤い光は児嶋の体を包み、児嶋のパワーを回復させる。
「何の目的で俺らを襲ってるわけ!!?黒いユニットなんかに操られて情けないとか思わないの!!?」
正気に戻せるかもしれないと、石の能力を上げていつも以上のテンションで噛み付くように吼えた。
「…別に?」帰ってきた杉山の返答は、呆気なくその可能性を打ち消した。

26 :お試し期間中。:04/11/07 17:01:21
(やはり石を奪うしかない。このままじゃ埒が明かないな…あの二人に仕掛けてみるか)
渡部は山崎に歩み寄ると小声で耳打ちした。
「児嶋達がスギをひきつけている間に、ジャイとゆーぞーの上に何か出してみて」
小さく頷いた山崎は息を吸い込み、二人に向かって大声で叫んだ。
「一万円からのおつりです!」途端に二人の頭上に大量の小銭と桜えびが出現した。
「うっわ、生臭っ!」渡辺が慌てて石を掲げ何かを作り出そうとするも突然のことに形にならず、
それらは二人に一気に降りかかった。
「ありがとちゃ〜ん」佐藤のお決まりの言葉が何故このタイミングで…
渡部のそんな疑問は直ぐに解決されることとなった。
山崎の能力で召喚された大量の小銭と桜えびはその言葉を合図に、
青い光に包まれたかと思うと一瞬で佐藤の持っている石に吸い込まれていった。
「エネルギー吸収…これまた厄介な能力だな」渡部は忌々しそうに舌打ちをした。
(一人一人止めていくしかないか…)渡部が田中に声を掛けようと三人から目をそらしたとき、
「よそ見してる余裕は無いんじゃな〜い?」青いレーザー状の光が渡部目掛けて発せられた。

「渡部さん!!」山根が声を張り上げたのと、ゴッと鈍い音が響いたのはほぼ同時だった。
佐藤が放ったレーザーは渡部を傷つけることはなかった。攻撃が体を「すれ違って」いたのだ。
自分を通り過ぎた青い光、そして同時に響いた鈍い音。
「まさか…」渡部の嫌な予感は的中した。
音をした方を見ると、杉山の拳が児嶋の腹に思いっきり食い込んでいた。
「っ…ぐ、ぁ」児嶋は呻き声を上げ、ズルリとその場に崩れ落ちる。
「児嶋さんっ…くそっ!」慌てて駆け寄ろうとした柴田であったが、数歩前に出たところで
自分の能力では太刀打ち出来る筈が無いと、踏みとどまり悔しそうに杉山を睨み付けた。
「あんた今自分がなにやってるか分かってやってるわけ!?」
喉が嗄れんばかりの大声で怒鳴りつける柴田。
「…っ」一瞬、黒い光にのまれている杉山の石本来の紅の輝きが増した気がした。
心なしか杉山が苦しそうな表情を浮かべている様にも見える。しかし直ぐにまた元の無表情に戻り、
「手間掛けさせやがって」床に蹲る児嶋の身体を蹴飛ばした。

27 :お試し期間中。:04/11/07 17:03:00
「レーザーなんて反則でしょ…」呆然とした山崎が呟いた。
「んなこと言ってる場合じゃねえだろ!!次来たらどうするんだよ!ボケッとしてんじゃねぇ!!」
柴田は佐藤を睨みながら弱気な相方を一喝した。
「ゆーぞーもう一発行けそう?」渡辺は佐藤の手元にある青黒い光を放つジルコンを覗き込んだ。
「んー…今ので全部みたい」もう出ないねー…またエネルギー吸わせなきゃ、と
緊張感のない会話をする二人。冷静にその場を見ていた田中が口を開いた。
「大丈夫みたいですよ柴田さん。どうやらあの光線は自分達だけじゃ出せないみたいです」
「さっきの光線は山崎さんのエビと小銭だったって事?」山根は不思議そうに田中に訊ねる。
「まぁ…そういうことになるね」田中がめんどくさそうに答える。
「ちょっとそのあたり詳しく聞かせ…」「あ゛――もう!」
下らない山根とのやり取りにヒステリックになった田中は、
「どうしてお前はそうどうでもいいところで食いついてくるのっ!!」
いつものコントの調子で山根の頭をバシバシと叩いた。

「児嶋…おまえ俺の為なんかに何やってんだよ…」怒りを露にした渡部の声に田中は動きを止めた。
渡部の拳は力を込め過ぎて指が白くなっている。俯く渡部に掛ける言葉も無く周りの4人は黙り込む。
「次は誰だ?時間がないんだ…そろそろ、行かせてもらうぞ」
痺れを切らした杉山が石の力を発動させる。

「何とかあの石を奪いさえすれば終わるのに…」
柴田は悔しそうに呟いて、自分の石に視線を落とした。
先程の児嶋への加勢で、自分の体力もかなり消費されている。
どっちにしろ、自分の石の能力がこの状況でそれほど役に立つとは思えなかった。
以前、黒いユニットに操られて襲ってきた連中をこの石の力で解放した事があったが、
先程怒鳴り付けたときの反応から今回は通用しないことは分かっていた。
それでも、近づいたときは確かに反応があったことを思い出し、
直接触ったら…もしかしたら、という気持ちが柴田にはあった。

28 :お試し期間中。:04/11/07 17:04:03
「山崎…ちょっといいか?」柴田は相方に、
この状況を突破するために今自分が出来る最良と思われる作戦を耳打ちした。
「そんなの、危ないから止めた方が良いって…早まらないでよ」
あまりに強引で無茶な作戦に、流石の山崎も慌てて止めようとする。
「上手くいけば敵が一人減るんだからいいだろ?失敗しても役立たずが一人減るだけだ」
柴田は既に覚悟を決めたようだった。俯く渡部に声を掛ける。
「渡部さん…俺の力、もう他の石回復させるのも無理っぽいんで、後はお願いします」
「柴田、それってどういう意味?」渡部が顔を上げる。柴田は答えずに背を向けた。
「失敗したらヤバイって!やめなよ柴田!」
日ごろから無茶なことを言う相方を、この時ばかりは無理やりにでも止めようと、その肩に手を伸ばす。
山崎の手が触れる前に柴田は走り出していた。その先には禍々しい赤黒い光を纏った杉山の姿。

「おいっ!何のつもりだよ柴田!!?」突然のことに声を荒げる渡部。
「無茶だ!!」「柴田さんっ!?」アンガールズの二人もこの柴田の行動には驚き、叫び声を上げた。
「気でも狂ったか?…まあいい、来るなら来い!」ニヤリと口元を歪め、拳を掌にバシッと打ち付ける。
「ケリつけてやらぁ!!覚悟しろっ!!!」普段以上にテンションの高い柴田の、気迫のこもった叫び声。
あっという間に二人の距離は縮まり、杉山の拳が柴田目掛けて振り下ろされる
柴田は飛んできた拳を寸でのところで交わし、杉山の懐に潜り込む。
目の前に揺れるのは杉山の首から下げられたアゲート。
黒く染まった石の嫌な感覚を振り切り、覚悟を決めて両手で掴み握り締めた。
「っの…離れろ!」グッと襟元を掴まれ足が床を離れる。
「…うぁ…」悪に染まった力が、石を握り締めた手から全身へと広がる。
こみ上げてくる吐き気と頭痛を抑え、最後の力を振り絞り思い切り叫んだ。
「いい加減に…しやがれぇっ!!」
その瞬間辺りをファイアオパールの赤い光が包み、
電気がショートしたような火花が散った。咄嗟に周りの6人は目を閉じる。


29 :お試し期間中。:04/11/07 17:04:49
暫くして辺りの空気が静まりかえると、山崎は恐る恐る目を開けた。
そこには気を失って倒れている杉山と柴田の姿。
そして真っ二つに砕けた黒いガラスの様な欠片と、本来の紅色を取り戻したアゲートの輝きがあった。

「まだ4人も残ってるのぉ?お疲れちゃんにはまだ早いじゃな〜い」
「あーあ。スギやられちゃったね…でも、まだこれからだよ」
めんどくさそうに立ち上がった渡辺の右隣には、床に倒れている杉山とは別の杉山が立っていた。
「…まじかよ」まさか人間まで複製するなんて…やっと敵が二人に減り、
なんとか反撃の手立てを思いついていた渡部は、予想以上の「黒い欠片」の力に呆然となった。
「ずっと一緒にやってきたんだからさ、これくらい出来ても変じゃないよね?」
渡辺が得意そうにニッと笑顔を浮かべた。
「スギ、頑張ってね」渡辺が自分の創りだした杉山の肩をポンと叩くと、
無表情のままの杉山のコピーは猛然と渡部に襲い掛かってきた。

「んな人形にやられてたまるかよっ…」
渡部は山根に目で合図を送り、突如杉山に背を向けて走り出した。
「あれ?逃げちゃうの?みっともないなぁ」
クスクスと笑いながら渡辺は渡部達の方へと歩み寄ってくる。
いつの間にか渡部は部屋の隅に追いやられていた。じりじりと近づいてくる杉山。
「ほら、君達も手助けしなきゃ。後ろからぶん殴るチャンスじゃない?
最も、そんなことやられたって全然効かないのは分ってるんだろうけどね」
山根はへらへらと笑っている渡辺を警戒しつつ、ゆっくりと杉山の背中に忍び寄った。
感情も感覚も存在しないらしい彼には、後ろに近づいてきた山根の存在にすら気がつかないようだ。
自分の能力が効かなかったら…そんな心配を抱きつつ、意を決して杉山の肩に手を伸ばした。
「先輩先輩…」4人の間に緊張が走る。ゆっくりと振り向いた杉山の口が、微かに開いた。

30 :お試し期間中。:04/11/07 17:06:37
「どうしたの山根?」そこから聞こえてきたのは、能力が成功した合図。
3人は安堵の溜息を吐き、山根は能力どおりにお馴染みのコントを始めた。
「何やってんのスギ?どうしたの急に…そんな、制御できないなんて」
一方慌てたのは渡辺である。自分の能力で作り出した武器が、思うように操作できない。
「どうして…何でっ?」渡部は渡辺の心の動揺を感じ取り、
いつの間にか渡辺との間合いを詰めていた田中に合図を送る。
「まあまあまあまあまあ。彼等が楽しそうなんだから、良いじゃないですか。」軽く渡辺の肩を叩きつつ、
実際にはやっている本人達は全然楽しそうにも無いコントを見て笑顔を浮かべる。
「そう、かな?」田中の能力の影響を受けた渡辺が顔を上げた。
右手に持った石の黒い光が揺らいでいる。
「そうですよ。だから、そんな物騒な物は早くしまって一緒に楽しみましょうよ」
「うん、そうだね」短い返事とともに、渡辺が石を握った腕を下ろそうとしたそのとき、
「ジャイ!!そんなキモイやつに騙されちゃ駄目じゃ〜ん!」佐藤が部屋中に響くほどの大声を張り上げた。
ビクリとその声に反応し、暗示が解けかける渡辺。
そこにキモイという言葉を聴いた田中の心の動揺が重なった。
「御免ゆーぞー。もう少しでこいつらにやられるところだったよ」
頭を掻きながら渡辺は佐藤の方を振り返った。

「あーあ。もうやってらんないね」田中は完全に気力を喪失し、
フラフラと何かに取り付かれたように部屋の隅へ行くと座り込んでしまった。
山根もそろそろ限界に近かった。少しでも長く時間を稼ごうと普通のコントにしたのが裏目に出ていた。
だんだんとオチが近づいてくる。きっとこの力を解いてしまえば、強力な力を持つ杉山のコピーを
足止めする術はもう残されていないだろう。自分にしか出来ないんだ。
その責任感だけが山根の気力を支えていた。
「今のうちにどうにかしないと…山崎、ちょっと聞いて」
アンガールズが時間を稼いでいる間に、渡辺は山崎に駆け寄った。
「俺がゆーぞーを抑えるから、ジャイの上に何かでっかいのを食らわせてやって欲しいんだ」
一発でアイツがのびそうなやつを、と続けると渡部は佐藤にとの間合いを慎重に詰めて行った。

31 :お試し期間中。:04/11/07 17:08:35
山崎は後ろを向いて油断している渡辺を見据える。
大きく息を吸い込むと巨大な何かを想像し、思いついた言葉を叫んだ。
「オレンジジュースのでっけぇ入りまーす!!」シェルオパールから白みがかった光が放たれる。
渡辺の頭上に現れたそれは本当にでかかった。
大人が一人入ってしまいそうな巨大なマッ●の紙コップ。
ご丁寧に子供の腕ほどのサイズのストローまで刺さっている。
佐藤は再び石を掲げ、エネルギーを吸収する言葉を言う為に口を開いた。

「同じ手が通用すると思うなよ!!」一気に駆け寄った渡部が、佐藤の額に掌で衝撃を与えた。
「ありがとちゃ…ぐっ」佐藤は堪らず後ろへ仰け反り、反動で石が床へと転げ落ちた。
「ゆーぞー…うわっ!!」頭上に現れた紙コップが渡辺の頭に強烈な一撃を加えた。
次いで背中の辺りに二打目を加えると、前のめりになる形で渡辺を床に押しつぶした。
巨大なそれにはたっぷりと液体が満たされているのだから相当の重さだったのだろう。
うつ伏せに倒れ、横倒しになったそれの下敷きになっている渡辺はピクリとも動かない。
右手付近に転がっていたアマゾナイトの緑の輝きは、持ち主の意識とともにゆっくりと消えた。
それとほぼ同時に、山根とコントをしていた杉山のコピーが緑の光に包まれて消え去った。
山根はパワーを使い果たしそれが消えたのを確認すると、
安心したように崩れ落ちて眠りについてしまった。
山崎が近づいて様子を窺うと、渡辺は完全に気を失っているようだった。
近くには黒い欠片が落ちている。

「気、失っちゃったのかな…渡部さん!とり合えずやりましたぁ!」パワーを大量に消費した山崎は、
へたりと床に座り込むと首だけを動かして渡部の姿を探した。
渡部は佐藤の額に手を当てたまま動かなくなっていた。
それと同様に佐藤もまたそのままの体勢で動こうとしない。
其処だけ時間が止まっているかのようだった。
近くには黒と青の光を半々に放っている石が転がっていた。
渡部の胸の辺りからは、ペンダントにつけられている水晶の透明な光が放たれていた。

32 :お試し期間中。:04/11/07 17:10:09
渡部は何もない真っ白な空間に佇んでいた。
「ゆーぞー…一体君らに何があった?望んで黒いユニットに入ったわけじゃないんだろ?」
誰もいない空間に向かって、優しげな声で語りかける。
「渡部?何の話をしてるの?」其処にいつもの調子の佐藤が現れた。
「あの黒い石、何処で手に入れたか教えて欲しいんだ…」操られていただけらしいと感じた渡部は、
つい先程に彼らのやっていたことについては触れないでおくことにした。
「何日か前に…ライブの後の楽屋に届いていたんだよ。
ファンだっていう子からのプレゼントだったかな。
最近流行ってるらしいじゃない?パワーストーンって言うのが」嬉しそうに話していた佐藤の背後に、
突然黒い靄が広がった。それはあっという間に辺りを暗闇にし、佐藤の姿はかき消された。
ある人物が渡部の前に現れた。

「…まさか、お前が黒いユニットを?」渡部はその人物に見覚えがあった。
「全く、俺の野望を邪魔してくれている白いユニットのメンバーに、
こんなに早く姿を見られてしまうとはね」
普段の姿からは想像もつかないような冷たい微笑。
渡部は背筋が凍りつくような感覚に思わず地に膝を付いた。
「安心しろ。今の俺じゃお前をどうこうできるような力はない。
こんな欠片では弱い人間の心を操るのが精一杯…」
空間にガラス片のような黒い欠片が浮かび上がる。
「これもお前達の所為でじきに力を失う…やはりあの男には荷が重かったようだ」
「あの男?」
「お前達を呼びにきたスタッフさ。知らなかったのか?
別に黒いユニットは芸人だけの集団というわけではないぞ?」
その人物はクツクツと楽しそうに喉を鳴らす。
「何でそんなことを今俺に言うんだ?黒いユニットを潰そうとしているこの俺に…」
今の渡部に武器になりそうなものはない。
「大体こんな石の力を利用して、一体何をしようって言うんだ!!」
この空間では何が起こるかは全く想像できない。
自棄だとばかりに渡部はその人物に食って掛かった。

33 :お試し期間中。:04/11/07 17:11:51
「之さえなければ、この黒い石さえなければ俺達は無駄な争いをしなくて済むって言うのに…っ!?」
突然その人物は渡部の目の前に現れる。一瞬で空間を移動したようだ。
「人間とは愚かな生き物だな…もしさっきの戦いでお前達以外のコンビが死んだとしよう。
そうすればライバルは減り、お前達のコンビには仕事が入る。
芸人として一番望ましいことが起こるんだぞ?人気も出るだろう…
内心ではお前もそれを願っていたんじゃないのか?」馬鹿にしたような口調で渡部に迫る。
「そんなので人気を手に入れたって全然嬉しくないな。俺達は実力で、正々堂々と戦っているんだ!!」
渡部の言うことなど全く耳に入らないかのように、その人物は語り続ける。
「…人間は今まで長い間、力を欲することで発達してきた生き物。
その心には常に闘争心というものが備わっている」
だからお前達は競い合うのだろう?とからかう様に続ける。
渡部はだんだんと自分の力が薄れてゆくのを感じた。
「脆く弱い心を持っているのも人間だ。それによって、信じていた者や愛するものを裏切ったりする」
だから如何した…反論するつもりがもう声すらも出ない。
渡部の様子はお構いなしに、その人物は語り続ける。
「精々裏切られないように頑張るんだな。
裏切り者は意外と近くにいるものだぞ?キリストを裏切ったユダのように…」
その人物の声が遠くなると同時に、渡部の力に限界が来た。
目の前が真っ白になり、突然現実に引き戻される。

重い瞼を開けた視界には、倒れている佐藤の姿。山崎の持っている青いジルコンの輝き。
終わった…そう呟けたかどうかは定かではないが、渡部は安心すると深い眠りへと落ちていった。



今回は一応ここまで。

34 :名無しさん:04/11/07 17:16:10
乙!読み応えがあって面白かった〜。
黒いユニットの男が気になる・・・。

35 :名無しさん:04/11/07 17:18:14
リアタイ乙!やる気がなくなる田中ワロタ。


36 :名無しさん:04/11/07 23:47:17
乙モシャ━━━━━━n:,:' ´∀`';n━━━━━━ !!
知的な渡部と謎の男の会話の展開にドキドキしました!
続きも楽しみです!!!

37 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/07 23:57:12
乙です!ハラハラする展開で面白かったです。動きがちゃんと書ける文章力は凄いと思います。
是非、こちらも見習いたい・・・。


黒ユニット編続き投下してみます!前に書いたCUBE石川編の続きで、
お試し期間中。さんの事件の後の展開です。

38 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 00:10:51
「お疲れ様でしたー。・・・ん?」
 石川が、楽屋を出るとドアのすぐ脇に、うずくまっている何かのカタマリを見つけた。
「・・・・・・。」
 石川はうんざりしながら、無言でそのカタマリを軽く蹴ると「ぐわ!イテッ!」という叫び声をあげ、
むっくりと起き出した。
「ひでえよ!石川、何で蹴るの?」
「和田?なにやってるの?ゴミだと間違えちゃったよ。」

 和田は蹴られた部分を大袈裟にさすりながら、当然だと言うような口調で石川に言う。
「はあ?なに言ってんの?一緒に帰るんじゃねえの?だからわざわざ待ってたんだけど?」
 今度は、石川が叫び声をあげる番だった。
「え?一緒に帰る?バカじゃないの・・・っ?」

 石川は呆然とした表情を隠すかのように、わざとクネクネとしながらふざけたような女口調になって言う。
「やだわぁ・・・和田君と帰ったりして、変な噂立てられちゃったらアタシ嫌だし・・・バカがうつっちゃうじゃないって・・・、あ。」
 石川は何かを思い出したかのように和田の頭上を見上げた。―そうか。そうだったけな。
「ああ、そうだったね。一緒に帰る?まあ、用事あるから途中までだけど。」
 和田は当然のように石川の先を歩きながら言った。
「当然だろ。だからわざわざ待ってたんだってば。」

39 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 00:30:51
「なあ・・・今日の地震、凄かったよなー・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「スタッフの人にケガなくて良かったな。」
「・・・・・・・・・。」
「インジョン、調子悪そうだったけどどうしたの?渡部さんとかアンガールズとかもキツそうだったよな。飲みすぎかね?」
「・・・・・・・・・。」
「なあ・・・石川、なんか言えば?」
「・・・・・・は?聞いてるよ。和田があそこでセリフとちったりしなきゃ、もうちょっとうまくいったのにって話でしょ?」
「・・・・・・・・・。」
 今度は和田が無言になる番だった。

 並んで帰ってはいるが、常に無言か、口を開けばイヤミばかりの石川に和田はため息をつく。
―こんな状態で、なんで一緒に帰りたがるんだろう・・・。

 元々、仲がいい方ではない二人である。(もはやそれがウリにもなっている位だったが)
石川から急に「一緒に帰ろう」と言われた時は、その有無を言わせぬ口調の強さと、タイミングの脈絡のなさに、
さすがの和田も驚きを隠せなかった。でも、何となく悪い気はしないようで、ついつい言われなくても石川を待ってしまう
自分に気が付くまで、時間はかからなかった。それに・・・。

「石川さー、最近また体調悪いの?」
「なんで?」
「ん、何か具合悪くなる時多くない?元々身体弱いけどさー。」
「・・・・・・・・・。あっ!」
「どうした?」

 その瞬間、石川のポケットの石が勝手に反応した。光を和田に見られないように、手で必死に隠す。
―ヤバイ。またいつもの「脅し」だ。・・・和田!
 みるみる直観力と精神力が増していく石川が和田の頭上を見上げるとそこには、黒いローブを着た、まるで漫画にでも出てくるような死神の姿がぼんやりと浮かび上がっていた。


40 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 00:46:27
「えー?石川、どうしたの?顔青くね?」
 急に青ざめた石川を心配しているのか、和田は石川に少しだけ顔を近づけて聞く。頭上の死神にはまるで気が付かないようだ。
「な、なあ和田。この道やめにしない?角曲がった方がいいんじゃない?」
「えー?何でだよ。こっちの方が近いじゃん。それに向こう遠周りになっちゃうよ?」
「いいから!オレ、あの角曲がったとこのファミマ行きたいのよ〜。和田く〜ん、お願い〜」
「お前そのキモイ口調やめろよ・・・。わかったよ。ファミマ行くからさ。」

 和田が呆れつつも道を引き返した瞬間だった。ガシャン!「うわぁっっ!!!!」
「看板が・・・看板が落ちた・・・!」
 誰もいない歩道に、なぜかクリーニング店の看板が落ちる音が響き、二人は叫び声をあげた。静かな住宅街に急に電気がつき、激しく吠える犬の鳴き声が聞こえる。落ちた「○○クリーニング」と書かれた看板は、かなり大きなもので、
もし巻き込まれていたら大怪我か、打ち所が悪ければ最悪の事態も考えられるものだった。
 和田の血の気が一斉に引いた。フラフラとその場にへたり込む。
「もし・・・あの時そのままここ歩いてたら・・・。」
「うん、お前多分下敷きになって死んでたかもね。」
 恐ろしい事を平然という、石川の様子に気づきもせずに和田はただ荒い息を吐くだけだった。

41 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 01:05:25
 石川は冷静に和田の頭上を見上げると、役目を終えたのだろう、もう死神の姿はそこにはなかった。
―今日の所は一安心か・・・それともインジョンの件で役に立てなかった自分への叱責のつもりだろうか。

 代わりに襲い来る、石の能力の代償である、激しい頭痛や吐き気に顔をしかめながらも周囲を見回した。
この死神を操っている本体の奴がどこかにいるはずである・・・が、彼には見つけることはできなかった。
ひょっとしたら遠隔操作できる能力なのかも知れないが、今の石川には知る術がなかった。
これ以上の能力の使用や下手な詮索は、石川自身の体調やひょっとしたら生命に関わるかも知れない。
それに、もしまた和田に死神の能力である「不幸なアクシデント」が起こったら・・・。

石川は和田を人質に取られているのも同然だった。
そしてそれが石川が「黒いユニット」に参加しなくてはならなくなった理由の一つであった。

―何となく腹が立つ。和田が死のうが生きようが関係ないのにな。
ここまで和田の為に動いている自分自身が面白くなかった。

和田は突然のアクシデントにビックリしているのか反面嬉しいのか、電話を誰かにかけまくっていた。
「おい、ちょっとスゲーよ!今さあ・・・石川と歩いてたらさー・・・」
和田の暢気さに呆れると同時に、ほんの少しだけ救われたような気分になった。

42 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 01:33:57
和田は興奮しては誰かに電話をかけ、激昂して喋ってはいるが、石川の耳にはまるで届かなかった。
ふいに地下鉄の駅の前で立ち止まる。ため息をついた。黒いユニットの集会・・・先ほどの和田に対する仕打ちといい、
インジョンの不手際で自分と、黒いユニットの手の内にあるスタッフには何か罰があるのかもしれない、
逃げ出したいがそうもいかないだろう。
体調の悪さを欠片を飲んでごまかす。手に触れた時のガラスのような感触と口に入れた瞬間のまるで
ゼリーのようなツルリとした喉越しへの変化。揺らめく黒い影の存在といい、憂鬱そのものである。

「和田、もう大丈夫でしょ。俺、用事があるからここでね。」
「・・・ん。ちょっと待って。うん、じゃあまたな。おやすみ。」
「ん。おやすみ。」
 振り向かずに地下鉄の階段を降りようとした石川の背後から、呼び止めるような叫び声が聞こえた。
「おーい!今日、お前のおかげで助かったよー。ありがとうなー!」
 石川は返事はしなかったが、思わず噴き出す。馬鹿馬鹿しさに顔がニヤケた。
これから気の重い集まりの前に、なんだか心が少し晴れたかのような気がしていた。

43 :お試し期間中。:04/11/08 01:38:35
じゃあちょっとためしに さんリアタイ乙です!!
私の文に自然に繋いで頂いて…とても嬉しいです。

そして感想を下さった方有難う御座いました。
之からの展開ですが、CUBE石川さんにもちょっと悪役手伝って頂く予定ですので…
近日中に続きを上げようと思います。楽しみに…して頂けたら嬉しいです。

44 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 01:55:38
とりあえずここまでです。次の黒いユニットの集会でバナナマン設楽さんを出す予定です。

和田に取り付いていた死神の石はまだちょっと後から明かしますんで・・・。
すいません。こういう小説とか書くのって初めてなもんで、他の作家さん達に随分劣ると思いますが、
もうすこしだけお付き合いしていただけたらと・・・。

>>43
いえいえ。こちらこそ楽しみです。お試し期間中さんの続きを楽しみにしています!

45 :名無しさん:04/11/08 01:59:42
リアタイ乙!!のんきな和田が(・∀・)イイ!!
お試し期間中さんとのコラボも楽しみだね。

お試し期間中さんはトリップ付けてみてはどうでしょう?

46 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 02:35:22
生意気ながらトリップつけさせてもらいます。
もはやお試し期間じゃないだろうと言うツッコミもお待ちして居ります。

続きは大体出来上がっているのですが、
石川さんが黒いユニットの集会終わった後の設定です。
その集会で指令っぽいのを受けたということになってしまっているので、
もしお話に影響無いようでしたら其方のお話の導入部を過去語りっぽくして頂ければ
先に指令内容をネタばれしておけるので、矛盾が減らせるかと思うのですが…
じゃあちょっとためしにさん如何でしょう?勿論スルーも可ですので+

47 :じゃあちょっとためしに ◆dRwnnMDWyQ :04/11/08 03:24:06
>>46
了解です。指令を受けるシーンを時間軸に矛盾がないように、追加しておきますんで。

時間軸がだんだん繋がってきてドキドキします(・∀・)イイ!!

48 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:16:57
>>47
初書きで此処までドキドキするとは思ってませんでした。(・∀・)=3
では、これから続きの方上げたいと思います。

また長いですが、飽きずに読んで頂けると嬉しいです。

49 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:18:02
渡部は事務所で数日前のあの出来事を思い出していた。

机は割れて床に穴が開き、数名が倒れていた楽屋に戻ってきた芸人達を、
山崎が咄嗟の機転を利かせて
叩き起こした田中の能力で全て地震の所為だと無理やり納得させたらしい。
幸いにもスタッフの怪我もかすり傷程度で済んだそうだ。

スタジオの復旧に数時間待たされたがそれが幸いしてインスタントジョンソンの三人や
山根、柴田も撮影前に目を覚ました。
柴田は黒い欠片の影響を受けた所為か頭痛が止まらなかったが、
本番は何とかから元気でいつもどおりのテンションで乗り切ることが出来た。
回復した柴田と佐藤の能力で何とか動けるまでになったアンジャッシュの二人は、
ビッキーズの須知から貰ったというアメのお陰で更に回復し、撮影本番には完璧な演技を見せた。

撮影が終了しようとしていた頃には、全て丸く収まったかのように思えた。
撮影終了後の楽屋で柴田が激しい頭痛に襲われたことを除いては。
突然頭を押さえて座り込み、立ち上がることさえも困難な状態だった。
佐藤の能力も全く効かず、柴田自身の石も全く輝こうとしなかった。
周りで不思議がる芸人達には風邪だと言って誤魔化した。
まだ体力の残っていた山崎が、タクシーで何とか家まで送り届けたそうだ。
一晩寝て少しは治まったらしいが、数日経った今でもまだ本調子ではないようだ。

「…」「おい、渡部…聞いてんの?」おーい、と渡部の目の前で手をひらひらと動かす児嶋。
あの日以来渡部は物思いに耽ってボーっとすることが多くなった。
「あ、悪ぃ…でもどうしても思い出せなくてさ。聞いた内容ははっきりと思い出せるのに…」
渡部は精神空間の暗闇で出会った人物との出来事を覚えてはいたが、
その人物の顔自体がマジックで塗りつぶされたように全く思い出すことが出来ずにいた。
「また…仕方ないか」再び黙り込んでしまった渡部に呆れながらも、児嶋は諦める様に肩を竦めた。

50 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:20:32
「あ゛ー!!もう…だからそこはそうじゃねぇんだって!!」
「だからって怒鳴ることないじゃな〜い」
平穏な事務所内に突如響いた怒鳴り声と、それを宥めようとする緩い声。
事務所一のハイテンションコンビ、アンタッチャブルが何やら揉めていた。
どうせネタ合わせで何かあったんだろうと、そこに居合わせた大半の者はさして気にも留めず
大声によって中断された自分達の会話を再開した。

「どうしたの柴田?何か最近イライラし過ぎてるんじゃない?」
自分のちょっとした冗談にものすごい剣幕でつっこんで来る相方に、山崎は心配そうに訊ねる。
「なんでもねぇよ!…ただ、ちょっと風邪気味なだけ!!」
それだけだよ、と柴田は視線を背けながら吐き捨てるように答えた。
まだあの時のが残ってるんじゃ…と、山崎が更に問い掛けようとしたとき、
「おはようございま〜す」 「おはよう御座います…」
事務所のドアが開き、挨拶と共に入ってきたのはCUBEの二人。
タイミングを外した山崎は仕方なしに、入ってきた二人にお決まりの胡散臭い笑顔で挨拶をした。
「あれ〜?山崎さんまた柴田さん怒らせちゃったんスか?」
見るからに機嫌が悪そうな柴田の様子に気づいた和田が山崎に訊ねた。
「そうなんだよー…さっきからこの調子で参っちゃってさぁ」
柴田の方へ視線を戻すと、相変わらず機嫌悪そうに机の端を指で小刻みに叩いている。
石川は和田の後ろからその様子を窺った。

「柴田さん、まだ頭痛治まらないんスか?」
心配そうに訊ねる石川に顔を上げた柴田はああ、と短めの返事をした。
「あんまり酷いようでしたら、またあの頭痛薬飲みますか?」
カバンから小さなカプセルの入ったピルケースを取り出した。
数日前にも柴田はその薬の世話になっている。
とあるTV収録の前に石を使った戦いに巻き込まれた後、
黒い欠片の影響をもろに受けて数日間酷い頭痛に悩まされていたときに、偶々石川から貰ったものだ。
気休めにでもなればと飲んだところ、それまでの痛みが嘘のように消えた。
石川が石の事を知らないと思っている柴田は、随分良く効く薬だな、と位しか思っていなかった。

51 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:22:44
柴田は薬を受け取りつつすまなそうな表情で石川に言った。
「二度も悪いな…これなんて薬?今度自分で買いに行きたいんだけど…」
石川は申し訳無さそうに頭を掻きながら、
「いやー…これちょっと前に地方ライブで何処かの田舎っぽいとこ行った時に買ったやつなんで、
名前とか忘れちゃったんですよねぇ」箱もとって置いてないんです、と自然な言い訳をサラリと述べた。
「そっか、じゃ自分でなんか良さそうの探すしかねぇわな」ありがとな、と短く礼を言うと
テーブルに置いてあったペットボトル入りの緑茶で受け取った薬を飲み込んだ。

…この行動が事務所の先輩を陥れることに繋がるのは、自分でも良く分かっている。
石川は前回の失態を払拭するために、黒いユニットから与えられた使命を果たそうとしていた。
「もし良かったら…これ全部あげましょうか?最近柴田さん調子悪そうで、
後輩として黙って見ていられませんよ…仕事にも影響ありそうですし」
傍から見れば先輩思いの後輩としか思えないだろう…
そのカプセルが数粒残っているピルケースをそのまま差し出した。

「流石にそれはできねぇよ…」断ろうとする柴田の手に強引に握らせてこう言った。
「今度何か奢ってくれればチャラですから」ね?と、条件をつけて納得させる。
「まあ、せっかくの好意を無駄にするわけにもいかねぇしな…有り難く貰うとするよ。
じゃあ今度な。何でも良いから遠慮なく言ってくれよ?」
柴田は渋々了解し、ズボンのポケットにケースを押し込んだ。
「はい。楽しみにしてます」石川はニコリと自然な笑顔を作って言った。
「それじゃ…これで」軽く会釈をすると、柴田たちのいる机から離れ、
和田の待っている方へと歩いていった。
背後からは、元の調子に戻った柴田の軽快なツッコミが聞こえてきた。

52 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:36:13
それから数日後のネタ合わせ中、和田は上の空な石川に何度も大丈夫かと声を掛けた。
そのたびに素っ気無い返事をされ、それでも猶、しつこく訊ね続けた。
ガタンと不機嫌そうに椅子を鳴らして立ち上がる石川。
「どうし…」「トイレ」和田の問いが終わる前に短く答えると、石川はその場を立ち去った。
「そういやさっき柴田さんもトイレ行ってたな…最近急に冷えたからかな…」
一人残された和田はポツリと独り言を呟いた。

石川は洗面所の鏡の前で、鏡に移った自分の顔を見つめていた。
見るからに顔色が悪いのは、きっと黒い欠片の影響だろう。
溜息をつくと、自分のしたことを思い返していた。

柴田に渡したカプセルの中身はあの黒い欠片の粉だった。
ほんの僅か、3センチ程もある欠片の十分の一の量。
どれほどの効果があるのかは想像しても分からない。
只自分はあの集会で与えられた使命を完遂した。それだけは事実だった。
(大体、何でこんな回りくどい事を…直接欠片で操ってしまえば楽なのに。
悪意が目覚めるって訳わかんねーよ…石の意思ってか?くだらねぇギャグだな…
とりあえず言われた事はこれで済ませた。後は放って置けば良いんだったよな)

数日前とは打って変わって、柴田は薬の力で一時的にではあったが元気になっていた。
山崎もそんな相方の様子に、一安心した様子だった。
児嶋にも、事情を知らなかった同事務所の後輩の目にも、
どうみてもいつもどおりのハイテンションな柴田が映っていた。

だが渡部は知っていた。薬を飲んでいないときの柴田の様子が微妙に違うことを。
一度だけ、薬の効果が切れた後の柴田の感覚に、内緒で同調したときがあった。
普段なら5分が限界の筈なのに、多量のエネルギーが吸い取られる感覚に襲われ
3分と持たずに慌てて解除する羽目になった。
同調している間、更におかしなことに気づいた。柴田の気持ちが沈んだときに頭痛がしたのだ。
彼が無理にでもテンションを上げるとなぜかその痛みは弱まった。
まるで、常にハイテンションで居ることを強要しているような、そんな感じさえした。

53 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:53:55
渡部が心配してそのことを話題に上げると、柴田は上手い具合にはぐらかして逃げてしまう。
先程もそのことを言おうとして、トイレに行ってくると逃げられたばかりだった。

「…っ、くそっ」柴田は洗面台にダンッと手を突いた。
少々強くやりすぎたらしい。当たったところがジンジンと痛む。
だが、今の柴田には少しでもこの不快な吐き気と頭痛を紛らわせる何かが欲しかった。
あまり長い間居ると渡部に感づかれてしまう…
否、もう気づかれているのかもしれないがそれを言うのが何故か辛かった。
言ったところでまた、渡部があの能力で精神的ダメージを受けることが厭だった。
顔を冷水で洗い、気合を入れ直すと洗面所のドアを開けた。
目の前には、後輩石川の姿。よう、と軽く手を上げて挨拶をし、一歩外に踏み出したそのとき、
床に付いたはずの足元がぐらりと揺らいだような気がした。

気が付くと柴田は辺り一面真っ赤な空間に居た。
この感覚は、石の能力を使っているときに何度か感じたことがあった。
重力を感じない、自分の足元には地面が無かった。
なんとなくでは有ったが、そこが肉体とは隔離された空間だと想像できた。

54 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 04:55:22
―よう…いつも一緒に居るけど…話しかけるのは初めましてだな…
『お前は誰だ?』突如脳内に直接語りかけるような声が響いた声に返事をする。
―石さ。お前の持っているファイアオパールだ…
『石が…喋るのか?初耳だな』感じたことのある波動に
疑っているつもりは無かったが、突然のことにその言葉を鵜呑みにする訳にもいかなかった。
―なに、俺みたいに意思があるのは極僅かだがな。強い思いに晒された石はたまにこうなるんだよ。
『…強い思い?』
―例えば、大勢の人間に…強い信仰の対象にされたり、逆に恐ろしいまでに毛嫌いされたりしたってことだ。
『へぇ…んで、その石が俺に何の用?』
―お前は未だ俺の能力を使いこなせてないんだよ…
俺の正しい能力をわざわざ教える為にこうして話しかけてるんだぜ?あまり冷たくなるなよ。
『何言ってんの?俺は別に戦いたいわけじゃ…』
―力が欲しいんだろ?
『要らない…下らない石の争いなんかで、誰も傷つけたくないんでね』
力なんて必要ないね、と鼻で笑って答える。
―目の前で先輩が倒れたとき、お前は何も出来なかったな?
『っ…それは…』心が強く動揺する。
―あの時のお前の悔しそうな顔…適を睨み殺さんばかりの表情!!
『あの時は…確かに、力が欲しいと思った…けどっ!』咄嗟に反論しようと声を荒げる。
―けど?けど何だよ。いつ何時お前の知り合いがあんな目にあうか分からないんだぜ?
『…それは、確かにそうだけど…』実際にもう事件は起きていた。またあんなことが起きたら…
そう思うと、もっともなことを言う相手に対し返す言葉が無かった。
―お前は大切な人間を守る為に敵を憎めばいいのさ。実際憎かったんだろ?敵が…
『…』何も答えることが出来なかった。声が言っているのは紛れもない事実。柴田は俯き黙り込んだ。
―大丈夫。別にお前を乗っ取ろうとしているわけじゃないさ。
『…信じても、良いのか?』顔を上げた柴田の目は、
いつか敵であった杉山に向かって行った時の目と同じ目をしていた。
―お前は俺の持ち主…云わば主君というわけだ。戦いの道具である俺が、主君を守るのは当然だろ?
『…欲しい。力が欲しい。渡部さん達の役に立てる、強力な力が!!』柴田は力強く叫んだ。

55 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 05:02:11
―…お前達の敵が憎いか?殺したいほど憎いと断言できるか!!
『出来る…あいつ等は俺の大事な人たちを傷つける!!憎い…消すべき敵なんだ!!』
散々煽られた柴田の感情は、只操られていただけの三人にも向けられた。
―クククク…言ったな?「憎い」と…その言葉を言ったなぁ!?
『っ…これは、一体…』突然辺りが赤黒い靄に覆われた。柴田はつい数秒前に言った言葉を後悔した。
―それで良い…その気持ちだ!!
『…止めろっ!!…これ以上、踏み込んでくるな!!』次第にその靄は柴田の意識を蝕んでいく。
―憎しみこそが最大の凶器!俺が身勝手な人間達に抱いたこの感情!!仲良くやろうぜ宿主さんよ!!
『…ぅ…あぁああああっ!!』その感覚の気持ち悪さに、頭を抱えて叫び声を上げる。
―ひゃははははは!!ありがとよ!!お前の激しい感情は俺の良い栄養になったぜ?
『…くっ…』力無く頭を垂れ、赤黒い靄に捕らわれた体がまるで自分の物ではないような感覚に陥る。
―あいつらにも礼を言わなきゃなぁ…長年封じられていた俺の意思を目覚めさせるのに相当役に立ってくれた…
『あいつら…だと?』僅かに残った気力で、何とか声を発する。
―おっと、まだ意思が残っていたか…最後に教えておいてやるよ。俺が封印を解けたのは、
お前があいつらの黒い力をわざわざ飲み込んでくれていたからさ…これでやっと復讐出来る!!
『一体…何の事だか…』柴田には分からなかった。
あの後輩の親切が、まさかこんな事態を引き起こす原因になるとは予想も出来なかった。
―身勝手な人間どもにこの恨みの深さ、思い知らせてやる!!!
『……っ…』空間が一際強く赤い光を発したのと同じタイミングで、
柴田の意識は赤黒い靄に完全に飲み込まれていった。

「やっとお目覚めですか?」

56 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/08 05:04:57
数分前、石川は洗面所から戻る途中の廊下で誰かが歩いてくるのに気づき咄嗟に近くの部屋に隠れた。
ドアの隙間から様子を窺うと、それは見るからに調子の悪そうな柴田だった。
なんとなく声を掛けようと思いドアの前で待っていると、出てきた柴田と目が合った。
軽く手を上げていつもの調子で挨拶してきた柴田に、挨拶し返そうとした時、
目の前の彼が突然前のめりになるようにして倒れた。
自分が組織の命令で陥れた先輩を見下ろして、暫くその場で立ち尽くしていた。
彼がムクリと起き上がって自分にニヤと笑いかけてきたときに勘付いた。それで今に至る訳だ。

「お陰様でな…」答えるのは柴田の声。だが明らかに口調が違う。
「白いユニットを潰して欲しいんですよ」淡々と黒いユニットから言われた言葉を伝える。
「仕方ない。やってやるよ…それが、約束だからな」もう後戻りは出来ない…
「それじゃ、宜しくお願いしますね」軽く頷いて了解の意を示した柴田は、踵を返すとその場から立ち去った。
その後ろ姿を見送りつつ石川は、自分の所為で変貌した先輩に何の感情も持てない自分の神経が、
やはり黒い欠片に完全に犯されてしまっているんだなと、そう思っていた。


渡部は事務所内に悪い石の波動を感じた気がしてフと顔を上げる。
だが、黒い欠片の気配はまるで感じることが出来なかった。
戻ってきた柴田は、普段に比べてテンションが低かったが、
特に辛そうな様子も見せずにいつも通りの他愛のない話をしてきた。
その元気そうな様子に、態々嫌がることを聞き出すのも気が退けてこの日はそのまま解散した。

このとき何故彼の異変に気づけなかったのかと渡部が後悔するのは、これからずっと後のことである。


今回は此処までです。

57 :名無しさん:04/11/08 12:49:56
新作ラッシュキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

58 :名無しさん:04/11/08 17:46:55
じゃあちょっとためしにさんもお試し期間中さんも面白いです!

59 :名無しさん:04/11/08 18:12:14
>>◆dRwnnMDWyQ
単なる悪に終わらない黒ユニット編もおもしろいね!
続きも楽しみにしてるよ〜。

>>◆cLGv3nh2eA
イイ奴な柴田が黒になるのかぁ〜。ああハラハラする…。
今後、他のメンバーとの絡みが激しく気になる!

お2人とも乙です!

60 :名無しさん:04/11/08 20:35:01
乙です!!
どんどんストーリーが進んでいきますね!すごく楽しいです!
何気に相方守ってる石川さんがいい味出してます。

頑張ってください!

61 :名無しさん:04/11/08 21:12:21
お二人とも乙です。どんどん複雑且つ面白くなっていって楽しみすぎる…。


実は以前アンジャ短編を書いたので、少しだけ反映されていてすごく嬉しいです。渡部さん、背負っちゃいそうだなぁ…

62 :名無しさん:04/11/08 23:14:50
柴田さんが「渡部さんの役に立てる力が欲しい」と思ったことから考えたこと。

いつここ・山田さんの力って、自然を味方につける代わりに自然に左右されるんだよね。
そういう意味では制約のない菊地さんに守られることが増えたりしたら、
それに負い目を感じて無意識にそれ以上を求めてしまうんじゃないかな〜・・・。

63 :名無しさん:04/11/09 22:24:24
新スレ&新展開乙です。

関東では黒ユニに流れが向きつつあるみたいですが
関西の戦況はどうなんでしょう・・・こっそり投下キボンヌ。

64 :名無しさん:04/11/10 00:08:32
何となく捕手

65 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/10 18:38:45
そろそろ続きが書きあがるので近いうちに投下させて頂きます。

改めて他の方の作品を読ませて頂いたのですが…
皆さん心理描写とか人間関係を描くのが上手くて自分の文章が恥ずかしいです。
どうしても「戦い」をメインに考えてしまうのでなかなか思うように表現できなくて。
説明くさい文体もどうにかしたいものです。だらだらと長くなってしまいますからね。

>>63
勝手に関東を盛り上げちゃってますけど、関西の方読んでみたいですね。
吉本とか松竹系書ける方の降臨待ってます。

66 :前スレ518 ◆IpnDfUNcJo :04/11/10 20:56:32
書き手の皆さん乙です。何だか最近盛り上がってますね。

ところで、baseの芸人何組かで書きたい話があるんですが
投下よろしいでしょうか?(麒麟は出てきません)

67 :名無しさん:04/11/10 21:11:18
カモォォン!

68 :名無しさん:04/11/10 21:33:15
ぜ、是非お願いします。

69 :名無しさん:04/11/10 21:57:11
お願いします!

70 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:00:41
前スレ692のピン芸人書きです。今更ながら新スレ乙!
しょっぱなから面白過ぎる展開にドキドキしながら読ませて頂いてます!

だいぶ間が空いてしまったのですが続きを投下しようと思います。
とりあえずこれで最後になります。どうもありがとうございました。

71 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:01:28

ゾッとして、ドアを見た。そんな気配は微塵もしない。
「川島殿と拙者を探しているのでしょう。拙者が合図したら扉を開けて頂きたい。」
静かにドアを見据える波田。ピックを握る指が絃にかけられ、途端に空気がピリッと張り詰めたのがわかった。
俯いたまま流れるように指を動かし、波田はギターを鳴らす。
ギター侍お馴染みのあの曲だ。こんな時にネタ見せでもするんだろうか…。
川島の頭に一抹の不安がよぎり、どうしようかと思った瞬間、波田が叫んだ。
「今だ川島殿!!!」
一瞬呆けてしまったため反応は遅れたが、慌ててドアを開ける。
薄暗い部屋の中、ドアの隙間から漏れ出す桃色の光が川島の目を奪った。

「……!!!」
視界が開けてまず飛び込んだ光景に川島は声にならない声を上げる。
背筋が凍るような迫力。開け放たれたドアの向こうで、真っ赤な目をギラギラ光らせた長井が自分たちを待ち構えていた。
「うぉおおおーーーーーーー!!!!」
長井は、目当ての獲物を見つけた獣のごとく、波田に飛び掛っていく。
「残念!!」
波田が叫んだのと同時、川島は振り返り、そして息を飲んだ。
そこに立っていたのは『ギター侍』では無かった。本物の『侍』の姿があった。
波田の腕の中にあったいかついギターはスラリと艶かしい刀に姿を変え、その切っ先は真っ直ぐ長井を捕らえている。



72 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:02:13

長井の懐から、波田の首元から、眩い光が弾け飛ぶ。

「長井秀和…ッ!斬り!!」

勢い良く振り下ろされた刀は正確に長井の胸を貫いた。
長井の断末魔が部屋にこだまする。目を潰さんばかりの光の中、川島はよろめいてあとずさった。

光が消え、再び静まり返った楽屋内。川島は混乱する頭を抱えて短く息を吐いた。
斬りつけられ倒れ込んだ長井はぴくりともせず床に伏せ、波田はぬらぬらと液体の光る刀を振り下ろしたままの姿勢で動かない。
川島は震える手足で長井に駆け寄り、その体を揺すった。足元に広がる血溜まりに波紋が起きる。
「…長井さん!まさか…死んでねぇよな!?長井さん!!」
「生きてますよ。」
振り返って見ると、波田が自分の体に似合わないいかついギターを肩からかけ直している所だった。
能力が切れたのだ。口調も戻っている。ふと見ると血溜まりも消えていた。
川島は長井を仰向けに起こしてみた。斬られたはずの傷も無くなっている。
ふと思い出し、川島は長井のスーツの内ポケットに手を突っ込むと、さきほど光を発していたそれを引っ張り出した。
淡紅色に光るそれは、さっきの長井の瞳と同じ、毒々しい色をしていた。
「それが石です。俺が斬ったから、もう害は無いと思いますが。」
波田は、川島の手から石を取ると、首にかけた自分の石と照らし合わせ、そしてそれをおもむろに懐へしまう。
「…どんな形であれ、石を使うとすごく体力消耗しちゃうんですよ。長井さん、今は気絶…して…」
ぐらり…ッ、
そこまで言った時、波田は突然支えを失ったかのように後ろに倒れ込んでしまった。
「え!波田さん、おーい!」
慌てて揺すぶっても反応は無い。
そのうち、すぅすぅ、と規則正しい寝息が聞こえ出した。どうやら眠ってしまったようだ。
思わず安堵のため息をつきそうになる川島だったが。


73 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:02:55

「か、川島さん、何があったんですか…?」
突然上から降ってきた声にハッとして顔を上げると、開け放たれたドアの前に野次馬が殺到していた。
好奇の眼差しが川島に、そして倒れている二人に注がれている。
「二人、ケンカでもしたんですか?なんだか最近みんなピリピリしてますし…。」
後輩の若手が青い顔をしてそう問いかけてきたので、川島は苦笑いを浮かべて言う。
「違う違う、ちょっとネタ見せしてたらさー、テンション上がっちゃって…」
嘘の得意な川島だが、とっさの状況では上手く舌も回らない。苦しい言い訳に冷や汗が浮かぶ。
「誰か呼んで来ましょうか?救急車…!」
別の若手がそう言う。なるべくなら事を荒げたくは無い。
「いいって!大丈夫だって!ほらみんな早く戻って戻って…」
大声でそう言う川島の頬に、不意に大粒の涙が伝った。
突然の出来事に、野次馬は息を飲み、騒がしかった廊下は水を打ったように静かになった。
―――あれ、俺こんなに涙腺弱いっけ?
実際一番驚いていたのは川島本人だ。
グイッ、と袖で拭ってはみるが、涙は止まる様子も無い。
目頭が熱くなり、喉が焼けるように痛い。発する声も歪んでいく。
「…大丈夫だって…、言ってんじゃないかぁ…!みんな早く戻れよ…!」
ここまで苦しいのに嘘泣きなわけがなかったが、マジ泣きにしては実感が無い。
俯いてがむしゃらに涙を拭う。すると突然、ザァと目の前から人の波が引いていく気配がした。
顔を上げて見ると、野次馬たちは皆虚ろな眼差しで、各自の部屋または廊下の奥へと退散していく所だった。
やがて廊下から人影は完全に消え、川島はわけがわからず首をかしげる。
そんな川島の後方、気絶している波田の懐の中で、藍色の光が今まさに消えようとしている事など、川島は知る由も無かった。

涙はもう、止まっていた。



74 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:03:35

それから30分後、目覚めたのは波田の方が先だった。
ガバッ!と飛び上がる勢いで上半身を起こした波田に、川島は「おわぁ!」と驚きの声を上げる。
「おっどろいた…。大丈夫ですか波田さん。」
そう尋ねると、波田はきょろきょろと辺りを見回して納得したようにため息をついた。
「…すみません、ご迷惑をおかけしました。俺の能力のリスクは、使った後に猛烈に眠くなる事なんです。」
眉間にしわを寄せて不機嫌そうに長井を見る。
「長井さんはまだ起きないんですか。まぁいつかは起きると思いますけど…」
「あ、あの、」
そんな波田の言葉を途中で止め、割り込み入る。どうしても聞きたい事があった。
「波田さんの能力って、あれなんなんですか…?」
刀。血。斬りつけられたのに傷一つ無い長井。あれの全てが波田の能力なのだろうか?
「…俺も良くわかんないんですけど、多分相手の悪い部分を斬りおとす事が出来るんだと思います。」
首から胸にかけて下がる半透明なその石を、波田は目を細めて眺めた。
「良い石ですよ。長井さんの石とは違ってね。…まぁ、だからこそ長井さんは石に抵抗したんですけど。
 恐ろしい精神力ですよ。並の人間じゃ出来ない事です。」
呆れたようにして首をすくめると、波田は小さく笑って見せる。
あまりに現実離れした話についていけない。混乱する頭で問う。
「長井さんに、波田さんに、…他にもまだいるんですよね。石を持ってる人。」
波田は小さく頷いた。
「俺も何人かは知ってますし、かなりいると思います。ただ…魔力を封じ込めた石です。
 欲に目が眩んだ人間も、俺は何人か知ってますよ。そういう人間はまず他の芸人の石を奪おうとします。
 …用心してください。お二人とも、これからはいつ襲われるかわかりませんから。」
しっかり川島の目を見据え、真剣な口調でそういう波田の台詞には真実味があった。重苦しい空気が部屋を包む。
「…でも、俺たちは石を持っていない。」
押し殺したような声でそう言うと、波田は小さく首を振った。
「長井さんは、遅かれ早かれいつかは石を手に入れてしまうと思いますよ。こんな良い人材あまりいませんから。それと…、」
波田はそこで一度区切ると、懐から小さな巾着袋を取り出した。



75 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:04:21

口を開けて逆さにする。じゃらっ、と音がして、キラキラと光る石がいくつも床に散らばった。
一つ一つに不気味で妖しい魅力があり、川島はそのあまりの美しさに息を飲んだ。
キラキラ眩い石の中。そこには、さきほど長井を苦しめていた桃色の石もある。
波田は、その中から真っ黒で角ばった石を一つ選ぶと、それを摘み上げ川島に突きつけた。
「川島さんの石は、ここにあります。」
呆然と、目の前に差し出されたその石を見上げる。波田が何を言ってるのか川島はすぐには理解が出来なかった。
なかなか受け取らない川島に業を煮やしたのか、波田は無理やり川島の手を開かせると石を握らせた。
その途端、黒い石の中から透き通った青色の光があふれ出す。
「…ほら、やっぱり。これであなたも石の持ち主ですよ。」
波田は楽しそうにそう言うと、散らばった石を巾着へ戻し始めた。
手の上の黒い粒を見つめながら川島は小さな声で言った。
「波田さん、こんなにたくさん、石どうしたんすか。」
波田は答えない。無言のまま作業を続けている。

「…波田さんが、石をバラまいてんですか…?」

川島のその言葉にぴたりと手を止めると、波田は小さく首を横に振った。
「違いますよ。俺じゃありません。俺はただ、石を回収しているだけです。」
「石を…回収?」
最後の一つを丁寧に石を袋に詰め込みながら、俯いて波田は言った。
「…さっき言いましたけど、石を持った芸人の中にはね、悪用する人間もいれば、石を封印しようとする人間もいるらしいんです。
 でも俺はそれはもったいないと思うんですよ。…俺は悪用するほどずる賢くは無いし、封印するほどの勇気も無いですから。」
じゃり。小石が袋の中で音を立てる。
「…善にも悪にも興味は無いんです。俺は全部の石の能力が知りたいんです。それも、すごく強力なやつを。
 どうもこの石は、笑いの才能がある人間ほど強い力を授けてくれるようです。
 才能の無い芸人に渡った石を回収し、才能のある芸人に渡す。それが俺の今の生きがいなんですよ。」


76 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:05:02

淡々とそう話す波田の表情は虚ろで、何を考えているかはうかがえない。
「川島さんがどんな能力を持っているのか、期待しています。」
巾着袋を再び懐へ戻し、波田は立ち上がった。その足はドアの方へ向かっている。
「波田さん!」
黒い結晶を握りしめたまま、川島は叫んだ。
「俺はこんな石、いらない。長井さんも巻き込ませたくない。あんたのやってる事は…おかしい。」
顔を上げて波田を見上げる。背中を向けているため表情まではわからない。が、

「…何言ってんですか。…もう遅いですよ。」

波田は薄っすらと笑っているようだった。
ざりっ、と草鞋が床をこすり、足早に部屋を立ち去る波田の背中を、川島は無言で見送った。何も言う事が出来なかった。
彼は何を考えているんだろうか。善にも悪にも興味は無いと言ったが、果たして本当だろうか。
キラキラと光り輝く黒い石を見つめる。魔力を含むと言われるその石は皮肉にも美しかった。
こんなちっぽけな石コロなんかに今芸人たちが踊らされていると思うと憎くて仕方が無くなる。
川島は石を握り締めたままの拳を思い切り床にたたきつけた。

こんな石を世に出回してはいけない。
きっと何か恐ろしい事が起きる。もしかしたら、もう始まっているのかもしれないが―――

「石を封印している人たち…」
その人達に会わなくては。
川島はそう決心し、長井の目覚めるのを待った。


77 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:07:16
【波田陽区】
石…ヘミモルファイト←悪霊を払い、浄化する働きがある
能力…悪意に満ちた石に呑まれた人間を正気に戻す事が出来る。
   石が力を発すると、ギターが一時的に刀に変形し、相手の病んだ部分を斬り落とす。
   相手の力に悪意があろうと無かろうと、斬られると能力や動きを封じられる。
   相手の力が自分の力より強力な場合、能力は無効になる。ただし、一時的に能力・動きを封じる事は可能。
条件…「残念!」「〜斬り!」の一連の流れをやらなくてはいけない。その間は完全に無防備。
   斬った分の魔力・悪意は自分に返ってくるため、能力が切れた後は10〜30分程度気絶する。
   ギターを持っていないと発動出来ない。

【劇団ひとり】
石…ネプチュナイト←優れた統率力
能力…劇団ひとり・座長川島省吾が持つ事により能力が発揮される。
   川島省吾から劇団員の中の誰かに変身する事が出来る。
   (外見・性格・記憶全て切り替わり川島省吾とは全く別の人格に変わる。)
   能力が解けた後は元の姿に戻るが、その間の記憶は消えている。
   ↑らとは別に座長のみが使える、自在に涙を操り相手の戦意を喪失させる能力もある。(オプション的能力)
条件…人格はランダムで選ばれるため、出てくる人格を自分で選ぶ事が出来ない。
   そのため、全く役に立たなかったりする事もある。
   変身も涙もどちらもかなりの体力を消耗する。

劇団ひとりの能力、こんなのを一応考えてみました。
ただ今回の話の中で何も生かせなかったので、あんまり意味が無いのですが…。


78 :ピン芸人@前692 ◆LlJv4hNCJI :04/11/11 17:12:53
以上です。前スレでコメント頂き、本当に嬉しかったです。
だらだらと引き延ばしてしまいましたが、楽しく書かせて頂きました。
名無しに戻りたいと思います。本当にありがとうございました!

79 :名無しさん:04/11/11 17:20:01
リアタイ乙━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
次回作も是非読みたいです!とにかく乙でした!

80 :名無しさん:04/11/11 21:01:25
乙です!
劇団ひとりの能力あってますね〜劇団員の誰かが見てみたいです(笑)
波田陽区は本当に善も悪もない存在で・・・リアルですね。
「俺は悪用するほどずる賢くは無いし、封印するほどの勇気も無いですから」
一番現実に近い考え方のように思います。
とにかく楽しかったです!!ありがとうございました!!

81 :名無しさん:04/11/11 21:21:47
とにかく乙です!
待ってて良かった!

82 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:48:32
>>◆LlJv4hNCJI さん。
続きが気になってたのでとても楽しく読ませていただきました。
劇団ひとりの能力も、波田陽区の台詞もらしくて思わず引き込まれました。
お疲れ様でした。

83 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:49:22
>>56の続きになります。

山崎は最近急に柴田のツッコミが厳しくなったと思っていた。
向こうの要望に合わせて何とかボケを考えるのだが、そこは違う・面白くないと散々ダメ出しをされ、
終いには一方的に向こうがキレ気味になって会話が止まる。
それでも山崎は気にしないようにしていた。
きっと疲れてイライラしているだけなんだろうと、彼が元の調子に戻るのを気長に待とうと思っていた。

あるコント番組収録中の楽屋。
楽屋といっても各コンビにそれぞれ与えられているものではなく、数組共同で使う大きめの部屋だった。
他のコンビがコントを収録している中、偶々出番の無かったアンタッチャブルの二人だけが室内に残っていた。

山崎が言ったちょっとした冗談がきっかけで、また機嫌の悪くなっていた柴田が唐突にこう切り出して来た。
「お前なんでこんなに我侭言われてキレないわけ?」
あれ?やっぱ自分でも我侭って自覚してたんだ…
思わず出そうになった言葉を飲み込み、出来るだけ温厚に話を進めようとする。
「何でって…いつもこんな感じじゃない?」そうでしょ?と同意を求めるような調子で答えた。
「…嘘吐くなよ…本当はムカついてんだろ?相手の都合に振り回されりゃイライラすんじゃねーの?」
「ほら、俺だって遅刻して柴田のこと待たせたりしてるから…お互い様じゃない」
柴田の表情が少し強張った気がした。
「やっぱな…一方的だったらムカつくんだろ?」
「そりゃ…まあ一方的だったらちょっと困るねぇ…」山崎は頭を掻きながら答えた。

ドアが遠慮がちにノックされた。
「誰?」山崎が振り返り、訪問者に声を掛ける。

84 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:51:08
入ってきたのは矢作だった。
「そろそろ山崎の出番だってスタッフさんが言ってたから…」
「あ、そう?じゃあ…俺行ってくるね?」
相方の妙な質問に心配になりながらも、皆を待たせる訳にはいかないと山崎は楽屋から出て行った。
「それじゃ俺はこれで…」それを見送った矢作は楽屋から立ち去ろうとした。
「…ちょっと聞きたいことあるんだけど」柴田は声を掛けて矢作を楽屋内に呼び止める。
「何?」ドアにかけた手を下ろし、話を聞こうと矢作は柴田のほうへ向き直った。

「矢作さんは白と黒どっち?」椅子に座ったまま、柴田は矢作に訊ねた。
柴田が言っているのは石を巡るユニットの事だろう…
「どっちって…別にどっちでもないけど…」突然の質問に戸惑い、矢作は曖昧な答えを返した。
「へぇ…。俺ね、白い連中を潰そうかと思ってるんだ」
どっちでもないなら矢作さんには関係ないね。柴田は笑いながらそう続けた。

「白って…渡部さん達の、白いユニットのことを言ってるのかい?」
驚いた矢作の声が思わず裏返る。
「そ。それ以外に何かある?」当たり前だとでも言うように柴田はさらりと答えた。
「彼等の敵にまわるって言うのかい?」どうか冗談であって欲しい…そう願いつつ矢作は訊ねる。
「そー言う事になるかなぁ…」矢作の願いも虚しく、あっさりと柴田は肯定してしまった。

「そんな…」これは渡部達へ宣戦布告してると取らねばならないのか。
矢作はこの状況をどうしていいか分からなかった。
柴田が話したことは只のカミングアウトではない。石を巡る争いの中では命に関わる事もある。
事務所の先輩が同事務所の先輩を攻撃すると宣言しているのだから、
止めなければならないのは確実だった。

85 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:52:58
「…どうしたの?黙り込んじゃって」柴田が立ち上がり矢作に一歩近づいた。
「や、それは結構まずい事なんじゃねぇかと思って…」矢作の頬を冷や汗が伝う。
どうすれば止められる?柴田は何故そんな事を自分に言い出したのか…
矢作には分からない事だらけだった。
「まずいと思うなら、その石の便利な能力で俺を止めちゃえばいいんじゃない?」
出来るならね…柴田は普段通りの、他人よりちょっと高めのテンションで茶化す様に言い足した。
矢作は慌ててズボンのポケットに手を突っ込み、唯一の武器である石の存在を確かめる。
そうしている間にも柴田はどんどん間合いを詰めてくる。
彼の石は燃えるような禍々しいまでの紅に輝いていた。
(力を使うつもりか…)能力者である矢作には簡単に予想がついた。

「何もしなくていいの?やらなきゃやられちゃうよ?」
彼の能力がどのようなものか詳しく聞いたことはない。もし攻撃用の危険なものだったら…
明らかにいつもと様子の違う年下の先輩の目を覚まさせる為、矢作は覚悟を決めた。
ポケットから取り出した石を強く握り締め、大きく息を吸い込んだ。

「金縛りにあって動けなくなるんやぁ〜!」
なんとも気の抜けるような、しかし彼にとっては大事な武器を発動させる為の鍵となる言葉を叫ぶ。
矢作の石、ラリマーからは目を開けていられない程のな強力な閃光が発せられた。
通常ならばこの光が収まった後、力の影響を受けた相手に何らかの変化が起きる筈…だった。
光が完全に消え視界が元に戻ったとき、
地面に倒れ伏していたのは能力を発動させた張本人である矢作。
金縛りにあっているはずの柴田は平然とした…
否、かなりのテンションの高さで倒れた矢作を見て哂っていた。
その胸元には彼の石「ファイアオパール」が赤黒い光に包まれながら、
微かに本来の赤い光を放っていた。

86 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:55:27
柴田は石のパワーが大きすぎて感情のコントロールが難しいのか、
散々爆笑した後苦しそうに肩で息をしながら床に転がる矢作の元へ歩み寄った。
「残念だったねぇ…矢作さん。どんな気持ちなの?自分の能力にやられた気分ってぇのは」
倒れて身動きの取れない矢作の顔をしゃがんで覗き込む。
「矢作さんの石ってやっぱ強力なんだね…ちょっと力送っただけでこんなに強化できるなんて、
黒いユニットの連中が欲しがるのも分かる気がするなぁ…」
突然の事で状況把握に少し手間取った矢作であったが、
どうやら自分の能力を跳ね返されたらしいと言う事は柴田が笑っている間に理解することが出来た。

「あ、でも別に俺は石を奪うためにやってるわけじゃないから、安心してね?」
(あ〜…どうすっかなぁ…この状況はやべぇよ…)
敵が同事務所の、つい数十分前まで親しげに話していた柴田と言うこともあってか
いつもマイペースな矢作も内心相当焦っていた。
「この石って全然攻撃向きじゃねーんだよなぁ…」
柴田は溜息を吐きながら自分の石を眺めている。
(…んな説明どうでもいいって。それよりこの状況…どうすりゃいいんだよぉ)
何とか体を動かそうとするものの、指一本動かすことが出来ない。
「せいぜい今みたいに相手の能力を跳ね返す程度。
矢作さんが脅しに乗ってくれてホント助かったよ」
彼の言っていることは耳に入ってくるが、もはや矢作にはその内容など関係なかった。
(一体どうしたんだよ柴っちょ…黒いユニットなんかに説得されちまったのか?)
この状態ではそれを訊ねる術も無い。

「それじゃ、やることやって早く消えるとするかな」
柴田は矢作の石の上にファイアオパールを翳した。石は赤黒い光を放つ。
(あれ?なんか変な感覚が…)言いようのない不安が矢作の意識に靄をかける。
「先ずは一人目…」
薄水色の石に赤黒い光が吸収されていくにつれ、持ち主の矢作に影響が出始めたのだ。
「石取られるだけの方が良かったって思いをするかも知れないけど…」
赤い光を放つ石を持った手はそのままに、動けずにいる矢作にニヤリと笑いかける。

87 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:56:58
突如作業を続けていた柴田の表情から笑みが消えた。
「…あと少しなのに」ボソリと呟き顔を上げ、忌々しそうに舌打ちをする。
「やっぱり楽屋なんかでやるんじゃなかったな」
柴田は何かの気配に気づいたのか、酷く慌てた様子でドアから駆け出して行く。

十数秒後、小木と中川家の3人がコント撮影を終えて楽屋に戻ってきた。
跳ね返された金縛りと、石に送り込まれた謎の光によって
意識を失いかけていた矢作の視界に3人の姿が映る。
安堵の溜息を吐こうとしたがそれすらも出来ない。口を動かすことすら出来なさそうだ。
(どうやってこの状況を説明すればいいんだろ…)

慌てて駆け寄って来た小木が矢作を抱き起こして顔を覗き込む。
「矢作っ!何があったの?一体誰がこんなこと…」
真っ青な顔で呼びかける小木を、中川家の2人が宥めようとしているのが矢作の目に映った。
(おーい小木…とりあえず死んでねぇから、そんな顔すんなって)
自分は大丈夫だと伝えようとするが、身体は鉛のように重く意識も遠退きつつある。
「あんま動かさん方がええって!!小木君!!」礼二の怒鳴り声が遠く聞こえる。
(あ、やべぇ…ちょっと眠くなって……)
目の前に有った筈の小木の顔が見えなくなると同時に、矢作の意識は完全にブラックアウトした。

石の能力者である3人は倒れている矢作を発見すると、
一目で同じ能力者の仕業だと言う事に気づいた。
素人目にはどう見ても眠っているようにしか見えなかったが、
どんな能力に攻撃されたのか想像もつかない。
念のために小木が自らの石の力で「変身」した。
意識を失っている矢作をソファに寝かせると、意識確認や瞳孔、脈などを的確に診断していく。

88 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 21:58:34
「うん、大丈夫。寝てるだけだね」
全ての診断が終わった後、小木は額の脂汗を拭いながら言った。
「なんや、心配掛けよって…」礼二は溜息をつき、安堵の表情を浮かべた。
「小木君しんどそうやけど大丈夫?」能力を解除し、疲れた様子の小木に剛が訊ねる。
矢作の力無しに能力を発動させたため相当の負担が掛かったらしい。
「ちょっと休憩します…もし他の人が戻ってきたら状況説明はお願いしますね」
小木はソファの空いているスペースに座りって目を閉じた。

後から撮影を終えて戻ってきたくりぃむしちゅーの二人に
中川家の二人は矢作が倒れていた事と、それが能力者の仕業であるらしいと言う事伝えた。
説明の最中にアンタッチャブルの二人も各々楽屋へと戻ってきた。

上田は室内にあったテーブルに手を当てた。
「犯人はまだ近くに居るかもしれないな…」その場に居るメンバーを見回しながら上田は言った。
(楽屋に入れたなら関係者かもしれない…)考えたくないがそう疑うのが妥当だろう。
上田は手に握った石に意識を集中させる。
「あんまり無理すんなよ?」
相方の石の能力の便利さの裏にある代償を知っている有田は心配そうに見守った。

「…テーブルと机のニュアンスの違い、皆さんはどうお考えでしょうか。
一般的にテーブルは机の外来語表現だと思われている場合が多いそうです。
ですが実際は机を英語で表現するとデスク。つまり机とテーブルというのは別物なんですね。
使い分けとしましては、引き出しがなく食事・休息・娯楽に使われるものをテーブル。
それに引き替えデスクというのは、引き出しがあり仕事・勉強に使われるものを指しているそうです」

(この際質なんてどうでも良い…)
取り敢えず現場を見ていたであろうテーブルについての蘊蓄を言い
最後の決めポーズまで決めると、能力が発動した証である透き通った光が放たれた。
つい十数分前の出来事。一体ここで何があった?誰もが上田に注目していた。
その為楽屋内でもう一人、石を使っている者が居ることには気付く者は居なかった。
段々と記憶の時間が遡られ、遂に上田は矢作の姿を見つけだした。

89 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 22:01:30
矢作と対峙する誰かの姿が浮かび上がる。
後姿だけがぼんやりと浮かび上がり、ハッキリとは分からない。
もうすこし…あと少し記憶を遡れば正体が分かる、上田がそう思った瞬間。
突如全身を切り刻まれるような激痛が襲った。
普段以上に激しいそれに思わず両手で身体を押さえる。
「…っ、ぐ…ぁ…」突然苦しみだした上田に、その場に居た誰もが上田の身の危険を感じた。
「上田っ!!もういいから、早く止めろ!!」有田は石を払い落とし、肩を掴んで揺さ振った。
「上田さん!!」「大丈夫かいな!?」
力なく床に座り込んだ上田の様子を、皆が心配そうに窺う。

「すまない…姿は確かに見えたんだが、誰だかは…はっきり確認できなかった」
途切れ途切れにそう言った上田の目は、ある人物の足元を捕らえていた。
自信も確証も無い。顔を見ることは出来なかったが、もしかすると…
だが違っていたら大切な後輩を酷く傷つけることになる。
そう思うと今この場では何も言うことが出来なかった。

―二人目
自分の足元を睨みつける上田を見下して、柴田は微笑を浮かべた。
いつも明るく、よく笑う印象の彼からは想像も付かないような冷たい表情。
上田の異変に気をとられ、誰一人として柴田の表情に気付く事は無かった。
そのとき偶然柴田の感覚と「同調」していた渡部を除いては…

90 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 22:02:56
「矢作…気がついた?」
先に目を覚ました小木が呼びかけるが反応が薄い。
まだ石の能力の所為で意識がはっきりしていないのだろう。
「誰にやられたか、覚えてる?」
矢作は無言でゆっくりと首を横に振った。
「じゃあ、喋れそう?」
再び首を横に振る。肉体的ではなく精神的なダメージが大きかったらしい。
矢作の表情は暗く、目は虚ろだった。

(この状態が長引かなければ良いんだけど…)
小木は憔悴しきった相方の様子に、何故肝心なときに一緒に居なかったのかと後悔していた。
実際彼はそのとき収録中だった為、それは仕方の無いことだったのだが。
「ちょっと無理みたい。ゆっくり休ませたほうが…」

有田は頷くとその場に居る皆を見回して言った。
「そういうことだから…今日はこのまま解散しよう。ここにいても犯人が分かるわけじゃないし、
矢作も上田もかなり参ってるみたいだから、無理させるわけにもいかない」
皆はただその言葉に頷くしかなかった。

「矢作君…大丈夫なん?」帰り支度の済んだ礼二が小木に声を掛けた。
「もう少し此処で様子見ます。もしダメっぽかったら俺が送りますんで」
「大したこと無いとええんやけど…」剛は矢作の顔を見て心配そうに呟いた。
「もしかしたらまだ犯人がそこら辺にいるかもしれないんで、礼二さんたちも気をつけて」
「おう。そっちも気ぃつけてな。じゃ、お先に」礼二は皆に挨拶をしドアノブに手を掛ける。
「役に立てん能力で、申し訳ないなぁ…」剛は最後にポツリと漏らし、二人は楽屋を後にした。

「大丈夫スか?きつかったら柴田に石で回復してもらっても…」
山崎は心配そうに上田に声を掛ける。
「いや、そこまで酷くは無い…一瞬だったからな」上田は気丈にも笑ってみせた。
「もう全然痛みもないし、俺よりも矢作の方を心配しろよ」
だが…上田は数日後にあの痛みの本当の恐ろしさを知ることになる。

91 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 22:05:30
「じゃあ、俺達も帰ろっか。明日も仕事有るし」
「そうだな…それじゃ、皆さんお疲れ様でした」二人は挨拶をし、楽屋を出て行こうとする。
その後ろ姿を見ていた上田は、無意識のうちに柴田を呼び止めていた。

「何です?上田さん」声を掛けられ柴田は振り向いた。
「…いや、気をつけてな」自分でもどうしてだか分からない、
あの時の人物が彼だという確証はないのだ。
あまり疑いすぎて信頼を無くしてもいけないだろう。
彼は自分達と同じ白いユニット側の人間の筈…
「上田さんたちも気をつけてくださいね。いつ何処で狙われるか分かりませんから…」
柴田は真剣な表情でそう言うと、待っていた相方と共に廊下へと消えていった。

「それじゃ、俺達も帰ります。上田さんもお大事に…」
矢作は小木に肩を借りて何とか立ち上がることは出来たが、
まだ喋ることは出来ないようだった。
無表情のまま、小さく会釈すると小木に支えられながら楽屋を出て行った。
「同じ芸人同士なのに…酷いことするやつがいるんだな…」
矢作の姿を見送った有田が呟いた言葉に、
「全くだな…」上田は胸が締め付けられるような思いがした。

その後自宅に戻った上田の元に、小木から矢作を家に送ったとの連絡があった。
別れ際まで口を開こうとしなかった相方の事を、心底心配している様子だった。

92 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :04/11/11 22:08:47
ファイアオパールが目覚めた後の能力
・相手の能力を強化・反射する。
・相手の能力のマイナス面だけを増幅させて苦しめる。
・負の感情を送り込むことによって、不信感を抱かせ相手の精神を追い詰める。


今回も無駄に長くなってしまいました…
某コント番組の設定だったのに、劇団ひとりと森三中が書けませんでした。
登場人物が多いと訳分からなくなりますね(w

あと2話位で一応完結すると思いますので、それまでお付き合いいただけたら幸いです。

93 :名無しさん:04/11/11 22:10:52
リアルタイムキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
そして乙です!

94 :名無しさん:04/11/11 22:20:36
リアタイぃょ━━(=゚ω゚)ノ━( =゚ω)━( =゚)━( )━(゚= ノ )━(ω゚=ノ)━(=゚ω゚)ノ━━ぅ
全くもって素晴らしいです!こんな新作投下が楽しみなスレは
一番盛り上がってた時以来のバトロワスレ以来だ・・・。

95 :名無しさん:04/11/11 22:43:08
乙!大変な目に合ってるのにどっか呑気な矢作と、上田さんがイイ!

96 :名無しさん:04/11/11 23:45:11
リアルタイムでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
誰が柴田さんを救ってくれるのか・・・。号泣か?
ともあれ楽しみにしてます!

自分もがんがって書き上げよう。

97 :灰色 ◆IpnDfUNcJo :04/11/12 00:03:00
肩で息をしながら、西澤は、どうしてこんな事態になったのかとつい今まで
起こっていた事を思い返していた。


出演する舞台のために通い慣れた劇場に足を運べば、まず感じたのは纏わりつくように
全身を覆う、不快としか言えない空気。
すれ違う人々に普段と変わったところはなく、ただ空気だけがいつものそれと違っていて、
その奇妙な事象に無意識のうちに石を強く握り締めた。
簡単なリハーサルを終え、舞台を終え、何事もなく一日が無事に終わりそうな事に安堵して
(今思えばそれがいけなかったのだが)ネタを書くために楽屋でネタ帳と睨めっこしていると
突然、背筋を何かが這うような感覚が走った。

98 :灰色 ◆IpnDfUNcJo :04/11/12 00:04:18
朝感じたのと同じ質を持つその感じに、じわり、と嫌な予感が再び胸の奥からこみ上げてきて、
おそるおそる顔を上げれば楽屋内に居る5,6人の芸人たちが皆自分の方を見ている。
何かした訳でもない以上それだけでも充分おかしいのに、彼らの目は揃いも揃って
光のない虚ろなもので、西澤は今朝のあの奇妙な違和感の原因、そして危惧を曖昧なものから
完全に確信に変えた。


──もしかして、っつーか、もしかせんでもやばいやろ、これ。


直感的に危険を察して西澤が荷物もそのままに楽屋から飛び出すと、
楽屋内に居た芸人たちはまるで導かれるかのように彼の後を追いかけていく。
そして、目の前の非常事態に狼狽していた西澤には、一気に人口密度の下がった
楽屋の隅で一人不気味な笑みを浮かべていた人物の存在になど、気付ける筈もなかった。

99 :灰色 ◆IpnDfUNcJo :04/11/12 00:05:09
西澤は普段の姿からは想像出来ない程必死に走りながら、とりあえず一時的に
この状況を凌ぐための場所を探し、目に飛び込んできた倉庫に急いで身を隠す。
まるでTVアニメの如くその部屋の前を先程の芸人たちが走り去っていくのを足音で確認し、
西澤は扉の前に座り込んで大きく息を吐いた。

…そして今に至る。
彼らが石の力によって操られているのは、ほぼ間違いないだろう。
ただ問題なのは、力の出所が分からない事。
誰が示唆しているのかも分からないのでは頭を潰すにしても叩きようがない、と思案に暮れた時。

100 :灰色 ◆IpnDfUNcJo :04/11/12 00:06:13
「……っ!?」

突然背後から羽交い絞めにされ、一瞬抵抗する事も忘れて振り返れば
いつの間にか扉は開いていて、見知った芸人たちがぞろぞろと周りを取り囲んでいた。
自分を羽交い絞めしているのが誰なのかは確認出来なかったが、西澤にとってはもう
そんなのはどうでもいい事で、どうすればこの危機的状況を脱する事が出来るかと
頭をフル回転させる。しかしどう足掻いたって自分の力ひとつでこの大人数から逃れられるとは
思えないし、仮に石を使ったとしてもこの状況下で自分のそれは大して役に立つ訳でもない。
かと言って自身の力でここに居る全員を張り倒して逃げるんなんていうのはもっと無理な話で。
まさしく四面楚歌、もうどこにも逃げ場なんて残されていない最悪の状況に、
西澤は思わず項垂れて目を閉じた。

──うわー、アカン…もう終わった…

正面に立った男が西澤の首にかかっている、煌きを失くしたごく薄い青色の石に手を伸ばす。
西澤がもう何もかも諦めた直後、閉じられた瞼の向こうで、何か固い物が壁にぶつかる様な音がした。

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