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もし芸人に不思議な力があったら2

1 :名無しさん:05/02/10 19:26:11
現まとめサイト
http://geininstone.nobody.jp/


・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってます
・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドル・トリップを使用する事を推奨
 <トリップの付け方→名前欄に#(半角)好きな文字(全角でも半角でもOK)>
・既に使用されている石、登場芸人やその他の設定今までの作品などは全てまとめサイトにあります。
書く前に一度目を通しておいてください。

2 :名無しさん:05/02/10 19:29:31
前スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1099502933/

以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能。
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。

・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている
 (ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られた
 かりそめの魂であり、石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。

・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。

・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「白いユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。)


3 :名無しさん:05/02/10 19:39:53
乙!

4 :名無しさん:05/02/10 20:29:26
乙です。もう新スレかー早いもんですね。

5 :名無しさん:05/02/10 22:19:53
保守兼ねて新スレ乙!

6 :名無しさん:05/02/10 23:00:25
スレの消費が早いなー。職人さんたち新スレになっても頑張って下さい!
それと、新スレ乙!

7 :名無しさん:05/02/10 23:09:01
自分も実はホスト規制でスレ立て断念したんだよね〜
乙で〜す

8 :名無しさん:05/02/10 23:14:16
乙です!

9 :名無しさん:05/02/11 09:14:35
即死防止に乙

10 :名無しさん:05/02/11 14:32:00
 

11 :名無しさん:05/02/11 21:29:46
捕手

12 :名無しさん:05/02/12 02:26:41
即死回避ってどれだけやればいいんだっけ。
新作待ちつつ保守。

13 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:26:39
前スレ>>668からの続きです。

家城はニヤリと笑って、脇田のペンダントを引きちぎった。
「ひとつ、いただき。」
家城が石をしっかりとポケットにしまったのを見届けてから、林は品川に向き直った。
「さぁ、品川さん。」
林は一歩ずつ品川に近づいていく。
「今度はあなたの番です。」
逃げようにも、背後は壁。逃げるスペースはどこにもない。
「もう一度言います。今、石を渡してもらえれば、これ以上何もしません。」
「誰がお前らみたいな、窓際サラリーマンとオカマのコンビに石を渡すか・・・!」
「品川さん、ひどぉい!」
まだオカマキャラの抜け切っていない家城がくねくねと体をくねらせながら言う。
今や手を伸ばせば簡単に触れられるほどの距離にまで近づいてきた林は、冷酷に言った。
「それじゃあ・・・力ずくで奪うまでですね。」
林の石が光るのが見える。
この至近距離で、何回攻撃を見切ることができるか・・・あと1、2回というところだろうか。
(でも、死んでもこの石は渡さねぇ!)
品川はポケットの中の石をしっかりと握り、目を閉じた。


14 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:27:57
「品川っ!!脇田さんっ!!」


倉庫の入口の方で、聞き慣れた声がした。
「・・・庄司?」
そう、そこに立っていたのは間違いなく品川の相方、庄司。
庄司は手近にあった角材を手に、近くにいた家城の方へ迷いもなく突進する。
慌てて家城はストロベリークウォーツを握り締める。
「あぁら、怖ぁい、庄司さ・・・」
「キモいんだよ!」
家城が石の力を発動する前に、庄司は家城の腹部に角材を叩き込んだ。
「くっ・・・」
その場にうずくまる家城。
「脇田さん、大丈夫ですか?!」
脇田は惚けた状態ながらも、気力を振り絞って答えた。
「俺は・・・大丈夫、品川を・・・」
庄司は力強く頷くと、林の方へ向き直った。
「庄司さんもわざわざやられに来たんですか…」
不敵に笑う林の周りで風が舞い上がる。
「庄司しゃがめ!!」
品川の叫び声に、庄司は間違いなく反応した。
庄司の頭上をドラム缶が飛び去る。
庄司の代わりに品川が攻撃を見切ったのだ。
「邪魔しやがって!」
林は品川に風を打ち込む。
「くっ…」
「品川!!」
品川も、限界が近い。
庄司のために使った力と、林からの攻撃で体はぼろぼろだ。
ギリギリで自分の意識だけはなんとか保っている。

15 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:29:52
「家城!しっかりしろ!!庄司さんを止めろ!」
林が叫ぶ。
「わかってるわ・・・」
家城が女声で答え、そして腹部を押さえたままながらも立ち上がり、庄司を見つめる。
「家城の目を見るな・・・!」
脇田が弱々しくだが、はっきりと言った。
「黙れ!」
林が今度は脇田へと風を打ち込んだ。
しかし、それに最初のような威力はない。林も限界に近づいているのだ。
それでも、脇田を黙らせるには十分すぎる威力だった。
「脇田さん!!」

(俺に力があれば・・・力があれば、品川も脇田さんも助けられるのに・・・)

庄司の足元で何かが強く輝いた。
庄司は引き付けられるようにそれを拾い上げた。

この感覚はなんだ?
俺は、昔からこの石を知っていたような気がする。
この石は、俺に力を与えてくれるような気がする・・・

庄司は無意識のうちに、強く祈っていた。

(お前が何者でも構わない・・・俺に力をくれ・・・二人を助ける力を!!)

モルダヴァイドが、目もくらむほどに強く輝いた。

庄司の意識が薄れるとともに、体の中に力が漲る。
自分が何をしているのか、何のためにここにいるのか、そして自分が何者なのかさえもわからない。

そして、庄司は自分の意識を手放した。


16 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:34:10
今回はここまでです。

前回感想を下さった皆様、ありがとうございました。

林さんの能力について質問がありましたが、
すごく個人的な思い入れなのでわかりづらいと思うのですが、
ルミネでゲームをやっていたときに、ほかの芸人の皆さんは動くと髪もなびいたりするのですが、
林さんだけはぴっちり7:3状態が崩れなかったので
「あの髪はどれくらい風が吹いたら崩れるのかな・・・」
と思ったことがきっかけです。くだらなくてごめんなさい。

17 :名無しさん:05/02/12 07:16:08
シャロンさん乙です。
なかなか面白い石の選び方ですね〜。ちょっと笑ってしまいました。
林さんなかなか髪型変わらないですもんね。

18 :名無しさん:05/02/12 20:29:17
シャロンさん乙!
暴走庄司復活キターー!?

19 :名無しさん:05/02/13 00:20:07
乙です
なんだかすごいことになってきましたね〜・・・
庄司は次は暴走してほしくないですが・・・
頑張れ庄司!

20 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 00:56:19
前スレ >>587-597 の続き

「ったく、何なんだよ・・・。」
精神力を使い果たして床に寝そべっていたために、不運にも巻き上がった砂塵を目一杯浴びてしまった
野村がゆっくりと起き上がってペタリと座り込み、呆然と呟きを漏らす。
バイオレット・サファイアの力を解除し、機動隊の衣装を消せば衣服に付いた埃は払えるけれど
口に入ってしまったそれはどうしても拭えないらしく、何度も唾を足元に吐いている。
そんな彼の目前にあるのは、不自然な角度で地上から伸びる3本の太い鉄骨と
ほんの少し前までは天井だったのだろううねった鉄板の切れ端。
下にめくれるようにこじ開けられた天井からは、午後の太陽の光が射し込んでいて
それらを照らしだしている。

「・・・島田、大丈夫か?」
ちょっとした前衛芸術のようなその光景に苦笑いをするしかないらしい野村の傍らで
両脚を床に付け、立ち上がる島田を見上げて磯山が問うた。
「ん・・・僕は大丈夫。磯山くんこそ腕とか大丈夫だった?」
天井から落下してきた島田を両腕のみならず全身を使って磯山は受け止めたのだ。
いくら細身で体重も軽い島田とはいえ、磯山の腕に伝わった衝撃は大きなモノだっただろう。
不安げに問い返す島田に対し、磯山はへらっと笑って彼に応じた。
「あぁ、大丈夫大丈夫。」
石の力で腕力とか強くしてたし、と付け加えてぶんぶん腕を振り回す磯山に、島田は安堵の笑みをこぼす。

しかし。
「・・・・・・・・・。」
虫入り琥珀と黒珊瑚のネックレスを床から拾い上げる小沢の顔には笑みは浮かんでいなかった。
床に刺さった鉄骨の根元付近に、血が飛び散ったような痕や人の身体の一部のようなモノは見られない。
ただ、サビの破片とおぼしい細かな物体が幾つか散見されるだけ。
天井から落ちた島田は無事にキャッチされた事だし、怪我人は出なかった・・・のだろうけども。
沈痛げな小沢のその表情は他の3人に比べると異様なように映る。
「あかおか・・・くん・・・・・・」

21 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 00:57:22
「小沢さんっ!!」
ぽつりと小沢が人名とおぼしい単語を口にしようとした、その時。
聞き慣れたがなり声が聞こえ、はっと小沢は顔をもたげて声の上がった方を向いた。

ぜーはーぜーはーと荒い呼吸を繰り返しながら、そこにあるのは小沢の相方、井戸田の姿。
「潤・・・・・・。」
「一体何があった! 相手は! 誰も怪我とかしてねぇだろうな!」
潤さん、遅いッスよ! などと野村が上げる声など一切無視し
井戸田は真顔でずんずんと歩み寄ってきて、立て続けに小沢へと問う。
そのさなかに4人の姿をチラッと見やり、どうやら誰も重傷を負ってはいないだろう事を察すると。
「大丈夫なら、さっさと逃げるぞ。凄い音がしたんだ、人が来て厄介な事になる!」
「・・・駄目だよ、潤。」
乱暴な調子で言葉を続ける井戸田を、小沢は静かに制した。
「赤岡くんが、まだ・・・」
戻ってきていない。だから、ここから離れられない。そう真面目な調子で告げる小沢に対し。

「えっ・・・アカオカって、誰ですか?」
島田がキョトンとした表情で、どこか無造作に問いかける。
まさか彼の口からそんな台詞が聞けるとは思わず、小沢は一瞬言葉を失った。
「天井が落ちた隙に逃げ出した黒の側の奴の事だったら、別に放っておけばいいじゃないですか。」
「そうっスよ。小沢さん、気を使いすぎじゃないですか?」
そんな小沢の内心など気付ける筈もなく、憮然と言葉を続ける島田に同意するように磯山も口を開く。

「な・・・っ、みんなこそ何を言って・・・赤岡くんだよ、島田くんの相方の赤岡典明・・・。」
あまりにも当然のように言い放つ2人に対し、慌てて説明しようとする小沢だったが
「小沢さん、熱でもあるンですか? 島秀はピン芸人っすよ?」
即座に野村が告げる一言に再び小沢は言葉を失った。

22 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 00:59:15
・・・前の時と、同じだ。
小沢が思い出す『前』というのは、江戸むらさきの2人の石が目覚めたきっかけとなったあの夜の事。
あの時島田が虫入り琥珀を用いた事で、井戸田も野村も磯山も彼ら2人と会った事を忘れてしまっていた。
その事を覚えていたのは、小沢のみ。
『初めてですね。あの琥珀の力が作用しなかった人は。』
あまりの珍しさに発せられたそんな言葉をつい先ほども小沢は聞いた筈だった。
「・・・・・・・・・。」
ギュッと眉を寄せ、小沢は右手に収まっている黒珊瑚と虫入り琥珀に目をやった。
間近で見る琥珀は淡い蜂蜜色の輝きを発しており、以前と同じように強い魔力を秘めているように思える。
その琥珀の内側に封じられている黒っぽい虫の死骸が小沢には今、長身の男の姿に見えるような気がした。
小沢に思い出されるのは、その男が消失する直前に彼に向けた、穏やかな眼差し。
それが何を意図していたのか、小沢には何となく察せたような気がして。

所持者に関する記憶が失われ、存在も消され、その分を異なる記憶で補完されても。
赤岡の石である黒珊瑚はまだ輝きを失ってはいない。だから、何とかなるかもしれない。
その想いから、小沢は強い調子で井戸田に頼んだ。
「・・・お願い、潤さん。とにかくしばらくはここに人が来ないようにして!」
厭だから。石を巡る戦いで本当に取り返しの付かない目に遭う芸人が現れるなんて。
しかも、自分の目の前で。そんな事、それこそ認めたくなんかない!

「・・・何を考えてるんスか? ったく、しょうがねぇな。」
まったく意味が分からないなりに、それでも小沢の真剣な様子は伝わったようで。
井戸田はしぶしぶと首を縦に振り、シトリンに意識を集中させる。

「今の騒ぎで人がやってくるなんて、アタシ認めない!」
キーワードを口にすれば、輝きを放つシトリンから山吹色の光が波紋が広がるように周囲へ走っていった。
光の輪は工場だけに留まらずその外側の市街地にまで広がっていき、
人々の関心を工場で響いた物音や衝撃から逸らしてくれるのだろう。
「ついでに・・・こんなドデカイ器物破損なんて、アタシ認めないっ!」
返す刀でもう一度シトリンを輝かせれば、地面に落ちた鉄骨や垂れ下がる鉄板が光を帯び、
ビデオを巻き戻しているかのようにゆっくりと天井へと戻っていく。

23 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:01:42
「・・・・・・くっ。」
ギシギシと音を立てながら元の位置に落ち着いた鉄骨を見上げ、安堵の溜息を付く間もなく
井戸田に襲い来るのは石を使った代償。
全身の力が抜けるような感覚に、ゆらりと蹌踉めいてそのまま彼は床に座り込んでしまった。
「・・・ありがとう。」
必死になって駆けつけたばかりの状況が殆どわかっていない中で、
己の希望・・・寧ろ我が儘か・・・を聞き入れてくれた相方に感謝の言葉を漏らすと小沢は島田の方へ目をやった。
赤岡を消失から救うには、アパタイトの力だけでなくそれを補助する想いと力が必要であろう。
そしてその補助は、やはり彼でないと務められないように、小沢には思える。
故に、島田のみに向けて小沢は口を開いた。

「本当に、島田くんは赤岡くん・・・赤岡典明って人間の事、覚えてないの?」
念を押すように問う、小沢の声は僅かに震えている。
「幼なじみで・・・一緒にコンビ組んで・・・ねぇ、何か思い出せない?」
それでも島田の返答は、首を横に振る仕草だけだった。
「本当に? 全部無かった事になっちゃったの? 夏に単独やったよね? 2人で漫才やってたじゃん。
 俺、観に行ったよ。でも出だし3分の所で島田くんが間違えたのも、アレ全部俺の見た夢だったの?」
「小沢さん・・・・・・。」
徐々に声のトーンが上がる小沢の熱の入りっぷりに、磯山が困ったような声を上げた。
小沢には自分が赤岡という男に関しての記憶を失っていないという確信があるけれど
端から見れば、ずいぶんと奇異なモノに映るだろう。
何かの電波を受信したと思われても、小沢に文句は言えないかも知れない。

「じゃあさ、島田くんが本当にピン芸人だったら・・・ネタ、演ってみせてよ!」
「おーし、演ってやれよ。島秀。」
半ば涙目になりながらの小沢の言葉に、野村が島田に軽い調子で促す。
「一つ笑わせてやれば、小沢さんも少し落ち着くだろうし。」

24 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:04:17
何げに失礼な物言いの野村に、うんと頷いて返して一つ息を吸った島田だったけれど。
「・・・・・・・・・。」
そのまま急に数秒、いや十数秒とその場に立ちつくし、ピクリとしなくなった。
「ど、どうしたんだ?」
さぁっと顔色が青ざめていく島田の様子に井戸田が座り込んだまま慌てて呼び掛ける。

「おい、島田?」
「あれ・・・・・・いや、その・・・・・・」
何にテンパっているのか、磯山からも発せられる呼びかけにもしどろもどろに言葉を返す事しかできない
島田を見やり、小沢は無意識の内にぎゅっと手を握りしめた。
やってもいないのはもちろん、作ってすらいないピン芸のネタなど、出来るはずがない。
・・・これは、偽りの綻び。
「じゃあ島田くん・・・・・・舞台に出てきて『はい、どーも』の続きは何?」
今がチャンスと重ねて問いかける小沢の手の中で、黒珊瑚が輝きを増していく。
凛とした漆黒の光に呼応するように島田の白珊瑚も淡い光を放っていくけれど
それは所有者の意志とは関係なく発光であり、島田の戸惑いを増していく原因となった。
「はい、どーも?」
もう冷静に思考する余裕もなくなったのか、島田は小沢の妙な質問にも素直に小さくオウム返しして。

「はい、どーも・・・・・・ごうきゅ・・・う・・・です・・・・・・?」
改めて彼が口にする言葉には、自然と続きの語句が付け加えられていた。
たとえ記憶からはぬぐい去られていても、身体は、何年も喋り続けてきた舌は覚えていたのだろう
不意に口をついた『ごうきゅう』という単語。
「・・・・・・・・・!」
その単語に何かの引っかかりを覚えたのか島田がはっと息を呑んだ、瞬間。
白珊瑚の光が小さく弾けて島田を包み込んだ。

・・・そうだ。思いだした。
自身を覆う乳白色の輝きに、島田は声にならない呟きを漏らす。
この光を、白珊瑚の力を初めて目の当たりにしたあの時。
僕らの前に立っていたのは、僕らが助けようとしていたのは。一体誰だったかを。

25 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:05:22
「島田?」
弾けた光はすぐに収まり、廃工場の中は元の薄暗さを取り戻す。
その中で先ほどのテンパった表情とは異なる、怖れから来るそれを顔に浮かべだした島田に
磯山が不安そうに声を掛けた。
「小沢さんの意図はわかんねーけど、そんな振り回されてんじゃねーぞ、島秀。」
野村も島田に落ち着くように告げ、背中をポンと叩いてやる。
けれど島田はフルフルと首を横に振り、小沢の方へ一歩二歩と歩み寄った。

「・・・どうしよう、小沢さん。僕・・・何で・・・よりによって・・・あいつの事・・・・・・」
狼狽しきった島田の言葉と表情は、彼が思い出すべき事柄を思いだした現れ。
「あいつ・・・赤岡は・・・あの時、僕を庇って・・・」
「落ち着いて、島田くん。大丈夫。まだ間に合う。助ける事もできるから。」
元々カツゼツの悪い島田の言葉が、震える唇で一層聞き取りにくくなる。
小沢はそれでも何となく彼の言いたいだろう事を察し、コクコクと頷いてみせると
穏やかに、しかし自信を持ってそう応じた。

「・・・・・・本当ですか?」
今にも泣きそうな声で訊ねる島田に、小沢はもう一度頷いてみせる。
「島田くんが黒珊瑚に働きかけて、僕が虫入り琥珀に働きかければ・・・きっと彼をサルベージできる・・・」
違うな、必ずサルベージしてみせる。
言葉の終わりをそう訂正して、小沢は島田の顔を見上げた。
小沢の目と涙ぐんだ島田の目とが合い、数秒。わかりました、との意図を込めて島田の首が縦に揺れた。


何だか島田までも妙な事になっちまったぞ・・・そんな眼差しを向ける井戸田と江戸むらさきの2人の前で
小沢は島田と簡単に打ち合わせをすると床に虫入り琥珀を置き、その傍らに黒珊瑚のネックレスをも置く。
「・・・・・・・・・。」
手に握り込んだ小沢の石、アパタイトのもたらす力はネタ中で口にする甘い言葉の内容に応じた現象を
現実にも引き起こすモノ。
その力で、虫入り琥珀の強靱な魔力を打ち破る事ができるだろうか。
・・・いや、ここで弱気になっても仕方がない。
ふぅと小さく息を吐くと小沢は手の中のアパタイトに想いを注ぎ、輝かせ始めた。

26 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:07:19
アパタイトの青緑の光に負けじと乳白色の光を発しているのは、島田の白珊瑚。
この石は、幸運を呼ぶお守りと称され黒珊瑚とセットになって島田の手に回ってきたモノだった。
折角のお守りを2つとも持っているのも何だと黒珊瑚を相方に譲ったのが全ての始まり。
「・・・・・・っ!」
既に一発弓矢状にして石と精神力を酷使した事もあり、光はいまいち安定しないけれど
赤岡が戻ってくるか来ないかの瀬戸際とあれば島田は歯を食いしばり、石と己を信じて力を高めていく。
ここで自分の力不足から赤岡にもしもの事があったなら。
一生悔やんでも悔やみきれないし、実家にも下手に帰れないだろうから。

2つの石の輝きと、その内側から放たれる力に共鳴するかのように床に置かれた虫入り琥珀と黒珊瑚も
強く輝きを帯び始めた。
本気で石を輝かせる2人の様子に、これから何が起こるのかわからず見物するだけの3人も
固唾を呑んで事の推移を見守るばかり。

互いの石の力が高まったのを確認し、無意識の内にタイミングを計って2人はそれぞれ言霊を紡いだ。

 「・・・恋はここにあるっ!」
 「・・・だって君は僕の頭の中にいたからね!」

・・・だから、こんな所で消えたりするな。 戻ってこい!
祈りと共に発せられる甘い言葉とクサい言葉。二つの言霊に応じるように、アパタイトから放たれた
青緑の光は虫入り琥珀に、そして白珊瑚から放たれた光は黒珊瑚へそれぞれ吸い込まれていって。

「・・・・・・っ!」
一瞬の静寂の後、虫入り琥珀から光が逆流するように迸り、工場の中はしばし蜂蜜色の光で一杯になった。

27 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:15:34
今回はここまで。
次回か次々回にてようやく完結かと。

そして>>1さんスレ立て乙でした。

28 :22:05/02/13 16:28:40
長らく間があいてすみませんでした。ロザン編、投下したいと思います。
よろしくお願いします。

その黒い石が宇治原に侵食し始めたのは、その日の出番が終わった少しあとだった。何か軽く食べられるものを買いに行くと出かけた宇治原は、戻ってくるなり菅に黒い石と白い石を手渡した。
「これ、持ってて。」
宇治原から差し出されたその2つの石に、菅は訝しげな表情を浮かべる。相方から物を貰ういわれはない。ましてや石。そんなものを集めているとも興味があるとも言った事は一度もない。
「何なん、急に?」
「ええから。大事なものやねん。」
しかし宇治原の表情は本当の本気。黒い石は、さっき宇治原が弄んでいたものだろう。浅越に渡されたはずのものだったが・・・
「持ってて。」
宇治原は強引に菅にその2つの石を握らせる。つき返そうとした菅は、やたら自分にしっくりと来るその石に、思わず押し返そうとした手を引っ込めてしまう。
「お前は?」
「俺も黒い石は持ってる。俺にはこの黒い石だけで十分やから。」
宇治原はポケットから、箱に入った大量の黒い石を出して見せた。浅越に、何か聞いたのだろうか。
「この石は、俺たちに力をくれるんや。この石さえあれば、俺たちに立ちはだかるのも、すべて排除できる。」
「お守りか?」
「いや、もっとすごいもの。」
「ふぅん。」
菅は宇治原の考えをあまり否定しない。だから、宇治原の言葉を素直に聞いた。宇治原は勝気な表情を浮かべている。きっと、何か意味があるのだろう。
「この石で、俺たちの道を遮るものを排除するんや。」
「遮る、もの?」
「黒の力の前に、みながひれ伏す。」
菅にはその意味が深くは理解できなかった。まだ、その時には。



29 :22:05/02/13 16:53:25
時間かかっちゃってごめんなさい(;_;)

30 :22:05/02/13 16:55:57
「・・・んっ。」
灘儀の背中で寝息を立てていた浅越が、声を上げた。全員がその声に視線を集中させる。
「あれ?・・・・・あーっ!」
浅越は慌てたように灘儀の背中から飛び降り、メンバーから離れる。それを見て、メンバーは苦笑し、ヤナギブソンが浅越に近づいた。
「終わりましたよ。」
「え?」
「全部、終わったんです。あの石も、消えてなくなりました。」
「終わった・・・」
「ギブソンが、お前を元に戻してくれたんやぞ。」
突然勢いよく浅越に飛び降りられて、思わず転んでしまった灘儀が立ち上がりながら言う。よく見ると、みんな何もなかったように無傷だ。
「あの、えっと・・・」
「あの石が消えたら、みんな何もなかったように元気になったんです。」
「じゃあ・・・」
「終わったんや。悪夢は。」
久馬が浅越の頭を、子供にするように優しく叩く。浅越は慌てて上着のポケットに手を突っ込んだ。携帯のストラップには、黒い石はなく、あの青い石だけがついている。
「すいませんでした。俺・・・」
「もうええよ。めったにない体験もさせてもろたし、ちょっとB級映画の中に入り込んだみたいでおもろかったし。」
鈴木はくわえていたタバコをもみ消し、優しく笑う。みんなも、怒った表情は少しも浮かべていない。
「本当に、すみませんでした。俺があんな石に翻弄されたばっかりに。」
それでも浅越は深々と頭を下げる。あの石の力に振り回されて、みんなにかけた迷惑は計り知れない。何度謝っても、謝りきれないくらいに。
「あ――――っ!!」
浅越が目を開け、ほのぼのとした空気が漂っている中、鈴木が突然大声をあげる。
「なんなんですか?」
「思い出した!大事なこと!」
「ああ、さっき言ってたアレですか?」
「なぁ浅越、お前なんで俺らに「早く花月に戻れ。」って何回も言ってたんや?何か花月にあったんか?」
鈴木の問いに、はっとしたように浅越は時計を見る、その表情は見る見る険しくなっていく。そして、思い切り地面を蹴り飛ばした。


31 :22:05/02/13 17:09:57
「もしかして今から、花月へ戻ろうとしてました?」
「そうや。やって稽古せなやん。」
浅越の焦ったような口調に、眉をひそめながら久馬が答えると、浅越はメンバーの行く方を遮るように立ちふさがった。
「戻ったらダメです。」
「なんでや?」
「俺はあの黒い石を、いつのまにか大量に持っていました。そしてそれを、宇治原さんに全部渡したからです。」
「やったら、すぐに戻って宇治原さんからあの石を取り上げないとやないですか!」
言われて、ヤナギブソンが走り出そうとする。しかし浅越はヤナギブソンを止めた。
「なんでですのん?」
「もう、きっと手遅れだ。あの石は黒の意思を広めたがってた。これだけ時間が経っていれば、当然宇治原さんの中に黒い石の力は浸食してる。そして・・・」
「仲間集めを、始めてる。」
気まずそうに浅越が濁した言葉を、鈴木が言った。浅越はゆっくりと頷く。
全員が言葉を失った。悪夢は終わっていなかったのだ。むしろ、これからが本番なのかもしれないと。



32 :22:05/02/13 17:16:38
菅 広文
 石:マスコバイト(白雲母)
   自由な発想や斬新な思考を導く。転じて、黒の石に新しい能力を見出す。
   力は菅が思考をめぐらせることにリンクして発動。
   条件として、宇治原が一緒に居なければ発動しない。

宇治原 史規
 なし。黒い石のみ。

ということで、これからがんばってロザン編を投下していきたいと思います。
今日はとりあえずココまでです。


33 :名無しさん:05/02/13 17:39:56
>>28-32
乙。しかし偽物対策の為にもトリップつけてくれないか?

34 :名無しさん:05/02/13 18:40:38
うわー黒は頭いい人ばかりですね。
大丈夫かー、白。

35 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 18:40:31
1さんお疲れさまです。

シャロンさんの林さんの力の由来笑いました。
カリカ黒似合いますねー。
ところでポイズンといい何故シュールと言われる人達は黒なんですかね。
アンガは違うけど。

ekt663D/rEさんいつもながら面白すぎです。
虫入り琥珀の力怖いですね。
でも、小沢さんと島田さんの友情にはグッときました。

22さん、関西でもすごい事が起こってますね。
一体どうなるんでしょうか。

以下前スレ652からの続きです。


高橋が駅から出ると既に路面は乾いていた。
もう外は真っ暗だ。
高橋は大きくため息をついた。
石が手元にきてからもう一週間ぐらい経つ。
今の自分はいつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなものだ。
もし、人前で力を使ってしまったら。
それだけならまだいいが、誰かを傷つけたり、殺してしまうかもしれない。
一体自分はどうすればいいのか。
石の力が使えない事、最近の事務所内の雰囲気、矢作の事、
そして先ほど駅の立ち食いそばを食べたときに七味のふたが取れて
そばの上に七味が山盛りになってしまった事、そのすべてが高橋を苛立たせた。
飲めない酒でも飲みたい気分だが、飲み屋の雰囲気は嫌いだし、
そもそも人の多い場所にいく気がしない。
家へ向かう途中にあるコンビニでビールを買い込み、家路へと急ぐ。


36 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:00:40
ふと、小さな公園の街灯が目に入った。
小学生の頃よく遊んでいた公園にポツリとともった灯。
高橋は吸い寄せられるように公園の中に入り、街灯の下のベンチに腰掛けた。
何もすることがないので、ビールを一缶開けて飲む。
吐く息が白い。胃が冷たくなって体が震えた。
−ひょっとしてこの石には、力なんか無いのかもしれない。
高橋はお守りに入った石に触れながらそう思った。
今野や渡部たちに比べて、自分の様に地味で華のない石。
高橋はもう一口ビールを飲んだ。
このお守りは大学受験の時に母が買ってきてくれたものだ。
結局受験には失敗してそのまま引き出しに放り込んでおいたものを
何か石を入れるのに手ごろなものは無いかと探していた時に見つけたのだ。
浪人したとはいえ合格はしたのだし縁起が悪いという事も無いだろうと思ったのだ。
何より、石を持ち歩くのに今野とおそろいの携帯ストラップにするのも
薄気味が悪いし、ファンにすら煮しめた様なTシャツを着ているといわれる自分が
渡部達の様にアクセサリーにするのも抵抗があった。
−お守りっていらなくなったら神社に持ってくんだっけ…
 この季節に夜の公園でビールを飲むのは無理があったようだ。
薄着のせいだろうか、高橋の手が冷たい、足が冷たい、
なんだか腹も痛くなってきた様な気がする。
もう帰るか、そう思い飲み残したビールを近くの木の根元にかけた。
−小学生の頃この木の陰に秘密基地とかいって拾ったエロ本隠してたよな…
高橋が懐かしい思い出に耽っていると胸元のお守りがぼんやりと光りだした。


37 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:09:50
それは淡い光だが、Tシャツと上着を通り抜けて溢れてきている。
石は黒いのに温かみを帯びた白熱灯のような色の光だ。
高橋が、あわてて服の下から石を取り出そうとすると
視界の端で木がざわめいている様な気がした。
石から目を離し目の前の木を見ると一瞬その輪郭がブレた。
次の瞬間それは小さな若木になっていた。
あっけにとられつつも高橋はぼそりとつぶやいた。
「コント、関係ないじゃん」
しかしその口角はいつもより上がっていた。
高橋はポケットの中の携帯へ手を伸ばした。

以上です。

高橋 健一
石 :アパッチティアーズ(悲しみを癒し、希望に変える・黒)
能力 :封をした酒(缶ビール等)を飲んで、任意の年齢
     (小学生など漠然としていてもいい)を想像して相手に
    中の酒をかけると対象の年齢がその年齢まで戻る。
    精神、肉体どちらか一方だけでも戻らせる事ができる。
    人間以外の動植物にも有効。効果は高橋の酔いが覚めるまで。
    14歳の○月○日などの細かい指定も可能だがかなりの集中力が必要。
条件 :酒が体にかからないと効かない。
    また年をとらせる事はできない。
    相手を若返らせた分だけ自分の肉体が年を取るが見た目は変わらない。
    精神、肉体のどちらか片方を若返らせた場合はその半分の年齢分年を取る。
    酔いがさめると元に戻る。
    体力を消耗するため、精神肉体片方なら一日二人
    両方なら一日一人が限度。
    ちなみに自分に力を使っても相殺されてただ疲れるだけ。
    また、投げる酒は一口飲むだけでよいが中身の酒
    全部の酔いがかえってくるため二日酔いになりやすい。


38 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:24:07
今野浩喜
石 :クンツァイト(無限の愛、自然の恵み、純化された存在
   を象徴・ラベンダーの色味のあるピンク)
能力 :気象を自在に操る事ができる。
    雨、雪、非常に強い台風くらいの風、人が気絶する程度の雷、
    成人男性位の高さの竜巻、などを起こしたり、止めたりできる。
    雨、雪の範囲は直径3mくらい。
    自然に降っている雨なども止められる。
    任意の方向に手をかざし、イメージして「んっ」というと発動する。
    雨+風などの合わせ技も可能。
条件 :連続して力を使えるのは3分まで。
    3分づつに区切れば体力がなくなるまで力が使える。
    また、力を使うと一定時間話すことができなくなる。
    (正確には声は出るが言葉で無く音にしかならない)
    竜巻と雷は操作がかなり難しくよほど集中しないと
    操作を誤る場合がある。
    雷と竜巻はかなり力を使うため一度出すと他の力が使えなくなる。
    竜巻を消す場合のみ力が使えるが体力を使いすぎるため失神する
    場合がある。 
     
高橋の力は、普段は若く見えるのに酔うと二十も老けると言われているので。
今野はコントの設定からです。


39 :遅れてきた青年 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:37:52
また感想を下さった方ありがとうございます。
全然戦わないこの話に付き合ってくださった方もありがとうございました。
書き手の方、高橋の能力使いづらくてすいません。
そして、まとめサイトの方タイトルを変更していただいて申し訳ありません。
ありがとうございます。
ところで、タイトルについて言われてた方がいますが
自分も遅れてきた中年にしようかとも思いましたが、TVで見る分には
若いのでそのままのタイトルにしました。そもそも遅れてきた割には意外と
力が分かるのが早い気もしますが。
あることないこと小ネタ使いまくりましたが、エロ本、お守りの話などはつくりです。
そして、また申し訳ないのですがお試し期間中。さんのキング黒の話を読んで
いろいろ考えちゃいまして。
人の褌で相撲をとるようで申し訳ないのですが、キング黒への布石話
書いてもいいでしょうか。
それぞれ別の話ですが、一回で終わりますし、スルーしていただいて結構ですので。
以上長々と失礼しました。


40 :名無しさん:05/02/13 19:53:25
乙です!煮しめたTシャツワロタw
やっぱり、対象の芸人さんをよく知ってる方が小説を書くとすごく深みが出て面白いですね〜。

白寄の人力舎の中で、キングがどう黒になっていくか興味あります。

41 :名無しさん:05/02/13 21:13:51
>>39
乙でした。なかなか、ユニークな能力で面白いと思います。
戦っている話が全てではありませんからね。
初期にはマッタリした感じのお話も投下されていたようですし。

キングが黒になっていくお話、書いていただいて構いません。
寧ろ此方からお願いします。
それと一つ気になることが有ったのでしたらばのネタバレのほうに書いておきます。

42 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/13 21:17:07
トリップを付け忘れました…↑は自分です。

43 :遅れてきた青年 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/14 21:26:50
すいませんちょっと失敗しまして↓にトリップ変更します。

44 :遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/14 21:29:01
よろしくお願いします。

45 :名無しさん:05/02/15 02:27:51
キング編乙です!石の能力や条件など、丁寧かつ本人に合った設定で素敵ですね。

46 :名無しさん:05/02/15 07:57:24
前スレよりage

47 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:22:59
こんにちは。
黒視点からの話が少ないようだったので、いつもここからの話を投下したいと思います。
流血シーンがあるのと、黒側の話なので少し暗い表現があります。
苦手な方は注意してください。

48 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:24:03
せっぱ詰まった状況が続くテレビの仕事とは違い、営業の予定にはある程度の余裕が組み込まれている。
そのせいで予定より早く仕事が終わってしまい、空間には退屈の種ばかりが蒔かれていた。
それらが育って花を咲かせるころ、自分の世界に閉じこもっていた菊地が我を取り戻す。
コンビごとに分けられた楽屋は彼にとっては好都合だった。
誰かいたとしても特有の人懐っこさで乗り切れるが、
安定していない正義感を持つ芸人がやってくる予定なので周りと世界が分かれている方が都合良い。
まだ名前も知られていないのであまり強くないだろう。彼が高を括る理由の一つに高水準な能力がある。
水を操るアイオライトだけでも十分侵攻可能な上、具現化が出来るツァボライトまで保持している。
二つの能力を持つ人物は少ないだろう、欠点が見当たらないなら誰でも恐怖が掠れてしまうものだ。
それに他人に影響されない菊地自身の性格と、独特すぎた極端な思考回路を足せば跡形も無く消える。
決して他人には着こなせない細みのジャケット、
半端な位置に付いているポケットからメモ帳を取り出した。
使い慣れた鉛筆を握って絵を創ろうとしてもイメージが浮かばない。姿形があれば何でも構わないのだが。
最終的に目を付けたのは、ある意味一番近い場所にいる二つの石だった。
ちぎったメモ帳を絨毯代わりにして無秩序に並べる。消して華美ではないが人を魅了する光があった。
しかし菊地は引き込まれずに、慣れた手つきで鉛筆を動かす。
何を描いているか判断出来る位になったころだ。急に響いたノックが人の気配を連れてきたので、
落ち着いた態度で石を隠す。
返事を待たずにドアを開けたのは予想通りの相手で無作法に燃えた敵対心が険しい顔に浮かんでいた。

49 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:24:43
名前を知らない相手に興味を持つ可能性は少ない。相手を探ろうともせず傍らのペットボトルに手を伸ばす。
「黒だって事は知ってます」
動揺させようとしているのだろう、真剣な顔だが少し余裕がある。情報の漏洩具合はもう分かっている、
それよりも敬語を使われるくらい芸暦が伸びたことを実感した。
「どういう力?」
「え」
「目立つなら場所変えるよ?」
淡々と必要事項を確認されて恐怖したらしい。相手の顔が強張り後悔が滲む。
残りの水を一息に飲みきってから、ポケットに鉛筆とメモ帳を忍ばせ、廊下に出るドアに手を伸ばす。
すれ違う寸前に水を作り出した。ほぼ立ち尽くした状態でいた相手の首もとに右手を翳し、
鋭利に凍らせた氷を喉にあてる。
血は出ないもののある程度の痛みは伝わったらしい、男は顔を歪めて目を合わせてきた。
「石使わないままだったね」
一歩間違えれば人殺しになる状況でも普段通りでいる菊地は、例え外見が弱そうだとしても迫力はある。
空気に飲まれた男は動けずに解放だけを待っていた。
「どうしてここに来たの?」
「相方が急に変になって、だから」
会話を中断せざるを得なくなる。廊下側から、遠い足音と芸人らしい笑い声が聞こえてきたからだ。
水の刃を蒸発させてから鞄を持ち、抵抗する気力さえ失った男と目を合わせた。
「やっぱり場所変えよう」
従わなかった場合どうなるかは言わずとも伝わる。項垂れた男は先を予想しながら頷いた。
水を補充したペットボトルを鞄に入れてからドアノブを開ける。
「あ、お疲れっす」

50 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:25:43
挨拶されて後ろを向くと、やはりあまり名前を知られていない芸人が頭を下げていた。
反応を返してから表情の暗い男を連れて進もうとするが、
廊下の奥にあった姿が気になって動きを止める。
主に大阪で活動している二人組は全国でも知られた芸人だった。
菊地は彼らが白に属しているのを知っている。
能力までは認知していないがわざわざ衝突する相手ではない。
気づかれないうちに身を翻して短い廊下を歩いた。
外は既に暗く、半月が辺りを照らしている。寿命に近づいた街灯が点灯を繰り返す姿は蛍に似ていた。
隠れていない星空の下、奇妙な組み合わせの二人組が歩く。
石を持っている芸人同士の戦いでここまでローテンポなものは珍しいだろう。
眠たくなるバラードより遅い変拍子の中、恐怖を克服しつつある男が目つきを粗げていた。
突然懐に手を入れて、隠し持っていたナイフを向けてくる。
「物騒な物持ってるんだね」
男が更に恐怖を募らせた。首の後ろに留めるはずだった刃の周りを水で包み込み、
丸みを帯びた形で凍らせて何も切れなくしたからだ。溶けない氷に絶望した男は抵抗を止めた。
一番背の高い建物と建物の間、弱々しい街灯が一人で辺りを照らし、温い風が通っていた。
辺りに誰もいないのを確認してから男の顔を覗き込む。もちろん首には氷の刃を翳して、
唾を飲んで上下する喉仏の上に傷がついたのを確認してから交渉を始めた。
「どうして黒が嫌なの?」
「他の芸人を傷つけてるじゃないすか」
「俺は白が同じことしてるのを何度も見てきてるけどね」

51 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:26:26
男が目を見開いた。更に畳み掛ける。
「君の相方もそれを知って黒に入ったのかもよ。だから君がこっちに来るのを望んでいるかもしれない」
「でも辛そうにして」
「相方だけ別行動取ってるのは悲しいね。しかも君は白寄りだ、正反対のことをして楽しいはずがない。
 大体白が何もしてこなければ争いもないかもしれないんだよ。
 黒だけになれば安定する、そうだ、それを分かって俺を襲ったの?」
訛った早口での質問が勝手なのは誰にでも分かる。でもどうでもよかった。
「相方を支えてあげないと」
だから心臓を抉る意見も堂々と口に出せる。
体を引いた男は、刃から離れているにも関わらず何もしてこなかった。
「黒がなくなればいい」
もう終わりだったはずが予想外に意志が固い。
素直に説得されておけばいいものを、だから痛い思いをする人間が増えるのだ。
呆れて物が言えなくなる前に自身を奮い立たせ、手に持っていた氷を溶かす。
チャンスと勘違いして顔を明るくした男の両目に水を飛ばした。
視線を失って戸惑う男が手を顔に当てる前だ。目の水分もろとも凍らせれば、相手は激痛でしゃがみこむ。
随分愉快な姿だ、氷で仮面を創ろうか。
高揚する気分の中で相手を降伏させる方法を考える。出来るだけ残酷に、
そうすれば歯向かう気力さえ無くなるはずだ。あれこれ想像を巡らせて、最終的にいい案を思いついた。
自らの顔が歪んでいるのが分かる。
異様な笑顔を浮かべていたかもしれない、ポケットの石が暗い光を放っていたから。
作り出した水を無理矢理相手の喉に通す。咳き込んでも流れる水が途中で凍ればどうなる?
喉を掻き毟る姿を想像して笑みがこぼれた。昔はあまり楽しめなかったはずなのにも関わらず。

52 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:27:09
右手を相手の首元に当てる。脈を流れる血液が操れれば面白いことになったかもしれない。
起こらない仮定を考えているうちに、喉元に留まる水を感じた男が顔を引きつらせた。
今までで一番の表情だ。力を込める。
「それはあかんやろ」
背後からマイペースな声が届いたかと思うと、振り向いてすぐの頬に何かが掠った。
菊地の足元に作られた小さな水溜まりから何か伸びている。
形を確認する前に足を取られ、バランスを崩して倒れ込んでしまった。
足に絡むのは奇妙な植物の蔓だ。乱暴に振り払ってから声の主を確認した。
一番関わりたくなかった相手だ、しかも二人揃っている。
「何しとるんやお前!」
耳に響く高音が緊張感を壊した。普段からあんな調子だったのか。よく見知った姿を二つ見渡す。
のんびりとして自己中心的にぼける平井と、相反した高いテンションでつっこむ柳原。
アメリカザリガニとして活動する二人には別々の個性があった。多分能力も違うタイプだ、
植物を生やしたのが平井だろうか。
倒れたままの男は放って、鞄に入ったペットボトルを取り出した。500mlを半分飲むだけに留める。
人目に付かない場所にしたのが失敗だったようだ。展開は急がずにこっちのペースを作ろうとした。
「襲われそうになったので」
「そんな風には見えんかったけどなあ。そやろ?」
平井が穏やかな笑みを浮かべ、柳原に同意を求める。
「今までで一番の嘘吐きや」
逆に真剣な柳原が呟いた。

53 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:29:48
「石は真っ黒やし、お前、どろっどろやで」
どろどろが何を指しているのか分からなかったが能力の見当はついた。
少なくとも戦える石ではない、真意を見抜くとか、頭脳戦でしか使えないものだろう。
一対一と同じようなものだ、これなら勝てる。
調子に乗って能力を使いすぎていることが気になったが、すぐに終わらせば大丈夫だろう。
話で終わらせようとしている相手の虚をつく。狙うのは無防備な柳原だ。
伸びる水を投げ、氷よりも鋭く一直線に尖ったそれと同時に一気に距離を詰めた。
植物が水鉄砲を弾いたのは予定通りだ。相手の死角に入った左手でナイフを作り、
柳原に向かって投げた。急所に当たらずとも激痛は走るはず。
長く伸びた植物が枝分かれする。血を生むはずの透明なナイフが掴まれた。
想像したより戦い慣れている、衝撃を予想して身を固くしたが強すぎた打撃に吹っとばされた。
しゃがんでいるがすぐ対抗できる体勢で相手を見上げる。
棒状に編み上げられた蔓は鉄パイプほどの強度を保っているようだった。
「ヤナ、下がっとれ。こいつ正気や無い」
「わかっとる」
見当外れに笑いたくなった。柳原が下がる前に水を投げようとしたが阻まれるのは分かっている。
曲がりくねる植物をどうにかするために水を刃状に変えた。本当は長刀を作りたかったのだが足りない。
地面に落とされた水のナイフが戻ってくれば少しはましになるのだが。
少し息が切れていた。幸いまだ熱は出ていなかったがあまり長くは戦えないだろう。
菊地達の本業は戦いではない、
今日の仕事は終わっているが芸人としての義務を果たすため体力を残す必要がある。

54 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:30:58
「早く終わらせませんか?」
争いのペースを早めるための挑発だ。向こうもせっぱ詰まっていたようで、
ほぼ一定の位置にいた平井が距離を詰めてくる。変幻自在に伸びる植物は刃だけでは対応しきれず、
切り落とした断面から伸びる蔓に腕を掴まれた。持ち替えた刃で切り落とすより早く腹部に衝撃が走る。
「痛い目見んとわからんようやからな」
呟く平井の声に躊躇いが混ざっていたのを菊地は聞き逃さなかった。白は直接傷つける勇気がない、
だから蔓で殺そうとせず足で蹴るだけで留まったのだ。
こっちに躊躇はない。
植物を操っている方の肩に刃を突き刺した。呻き声と呼ぶには大きすぎる音量で平井が腕を掴む。
相手が流す血は放って、手にしていた刃を数十本の鋭い針状に変えてから、容赦無く平井の体に投げた。
串刺しになったのは平井の体ではない。急に現れた盾状の植物がすべての針を受け止めている。
驚く暇が惜しい、平井の横に向かってから残しておいた水で杭を作り、怪我した肩を抉った。
相方を救う為向かってきていた柳原を凝視。
異様な迫力にされて怯んだ隙にすれ違い、固めたままにしておいた水のナイフを拾い上げる。
身を翻してナイフは右手に持つ。
もし菊地が落ちたナイフを普通の水に戻していたら勝負はついていただろう。
平井が肩を抱えて休憩を取っている間にペットボトルの水を飲み干す。
水の飲みすぎで気持ち悪かったがまだ耐えられる。向こうが動けない間に勝負を付けなければならないのだ。
出来るだけ細く鋭い線を作り出した。足の一本に穴を開ければ動けなくなるだろう。
平井も菊地の思考を汲んだらしく、見てはいけないものを見るような顔で菊地と目を合わせた。

55 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:31:57
水状のままにしておけば多少の伸縮は可能だ。二本の線を一本に見せかけてある、
仮に避けられたとしても一本を体側に伸ばせば致命傷、片側の足を貫通して二本目の足が刺せれば終わりだ。
頭の中で策を確認しながら地面を蹴る。十分な休息を得ていない平井が、苦痛を滲ませながらも対峙する。
線を低い位置で刺そうとすると、予定通り平井が横に避けようとした。
「あかん、相手の背中回れ!」
やかましいが的確な柳原の指示のせいで平井が背後に回ってしまった。
菊地自身の体が邪魔で水の線を伸ばすのが遅れる。水を脇差程度の刀に変え、
振り返りながら相手を切りつけようとするが遅い。
刀を持っていた手に植物が這い巡り、強く握られたせいで刀を落としてしまった。
「もうええやろ」
大きな息切れを繰り返す平井が切り出す。
落ちた刀を左手で拾い上げて対抗しようとしたらそっちの腕も掴まれた。
平井は怪我した方の手を使っているはずなのに動けない。
「何がお前をそうさせたんや。相方狙われとるのか?」
菊地が正気でいるにも関わらず狂人に対するような態度だ。
どこまで勘違いすれば気が済むのだろう、抑えきれなかった笑みがこぼれる。平井の顔が引きつった。
「黒に操られとるんやな。早よ治さんと、石出せや」
「操られてなんていませんよ」
笑みを浮かべたまま否定する。
ため息をつく平井が柳原を呼んだ。仲介するような位置に立った柳原が眉を寄せる。
「嘘やない」
「……気づいてないんや」

56 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:32:45
細い目を見開き、平井が驚愕を露にした。どうして誤解したままなのだろうか、
操られていないと言っているのに。不思議に思った菊地が首を傾げる。
「ええか。分かっとらんかもしれんけど、お前は黒に支配されてる。このままやったらまずいことになるで」
「まずいことって何ですか、人を殺すとか?
 流石にそこまではしませんよ、自分の意志でやってることですから。
 それよりそっちは白でしたよね、黒を負かそうとしてるんでしょう、
 やってることはこっちと一緒じゃないですか」
上下しない感情に乗せて早口で捲し立てた。何かにすがるようにした平井が柳原と顔を合わせる。
「全部本心や」
彼は嘘を見破るらしい。信じきった平井の表情が証拠だった。
草に掴まれていた右腕は相変わらず動かないが、怪我した手に掴まれた左手はそろそろ動かせそうだ。
握力が弱くなってきている、能力の代償である高熱の気配があるか確かめてから状況の確認をした。
落ちた刀は足を伸ばしても届かない。一応形を保ったままにしてあるが、
違う形にするには力の消費量が激しすぎる。水の遠隔操作は難しいからだ。
一旦思考を止めた。考えるだけなら意識を読まれない、相手を欺こうとすれば見破られてしまう。
ばれても大丈夫な純粋な作戦を考えた。力に頼るしかなかった。
左の指先から平井の目に水を飛ばす。緩くなった左手の拘束を振りほどき、
代わりに伸ばされた柳原の手を避けた。何とか拾い上げた刀で右手を拘束する植物を切断し、
本体から離れて弱くなる草達を払いのける。刀を下から上に振り上げようとした。
目の前が揺れる。倒れないように頭を抱えたが大きな隙が出来る。

57 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:33:38
ここぞとばかりに体を突き飛ばしたのは柳原だ、特別な能力は無いがかなりの衝撃で、
ある程度距離が離れてしまった。体勢は戻せたものの最大のチャンスが逃げる。
額に手を当てる。そろそろ熱が出始めていた。刀は構えるが壁に身を凭れる。
平井もある程度疲れているらしく、急に向かってくることは無かった。
あの状態では俊敏な動きは出来ない。菊地も動きは遅かったが、水なら速く動かすことは出来る。
刀を液状に戻して手元に留めた。地面に流れることは無い。
「もう疲れたわ」
平井が肩を叩き、呆れたように呟いた。次に真剣な表情に戻り、左手の植物を成長させようとする。
武器として形を成してしまう前に、柳原に向かって水を飛ばした。背中の壁を押すことで勢いをつけ、
自由の利かない体で向かう。
守るはずだった柳原を放って平井が向かってくる。水鉄砲は綺麗に避け、棒状の植物を振りかぶった。
頭をかばうため右手を翳すが打撃が無い。
強制的にすれ違い、有り得ない方向から伸びた植物が首に巻かれた。
植物の根元を目で追う。左手で持った棒ではない。濡らした血液を原料にして、
平井の肩から植物が生えていたのだ。さっき肩を叩いたのは種を仕込むためか、
根は張っていなかったらしく、平井が肩の植物に持ち替えて握りしめる。
後頭部の方へ引っ張られて息が詰まる。床に衝突するのは時間の問題だ。
虚を突かれたせいで対応しきれず、倒れた後に戦える可能性を考えた。無理をすればいけるかもしれない。

58 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:34:31
突風が吹いた。耳を掠る風の音で、失いかけていた意識を取り戻す。
衝突するはずだった床にゆっくりと落ちて、誰よりも知っている気配を感じた。
平井も柳原も数メートル先に飛ばされたらしい。人より軽い植物は更に遠くへ消えた。
第三者の介入が遅れる、いるはずなのに姿が見えない。
空から床を蹴る音が落ちてきた。三人が上を向くと飛び降りる男の姿。
屈む菊地と平井達の間に空いた広い空間に衝突する寸前、強い風で衝撃を拡散して綺麗に着地する。
どこにでもいそうな風貌だが菊地が間違えるはずがない。
「大丈夫か?」
茶色の髪を揺らし振り返る、いつもここからの山田が明らかな怒りを浮かべていた。
相方からの純粋な怒りが怖い、こちらに向いているのだろうか。
「このタイミングに援軍て」
ゆっくりとした声だから平井が呟いたのだろう。限界ではないが相当疲れているらしく、
殆ど力を使っていない山田に対して苦笑いを浮かべていた。山田の目つきが険しくなり、
現状況だけで判断した怒りを平井に向ける。
「何でこんなことするんですか」
菊地が黒である事を知らないのだ。急に介入してきた誤解は相手を困らせるのに十分だった。
「俺らはただの芸人なのに」
続く悲しそうな声色に反応したのは柳原だ。山田と同じように悲しみを浮かべて前に進み出る。
山田は自分から危害を加える人間ではない、カウンターを食らわないよう風の流れを確かめるだけで止まる。

59 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:35:14
「先手え出したのはそっちや」
「嘘つかないでください」
「嘘ついとるのはあいつやで。俺は石で嘘が分かるんやから」
「菊地はそんなことしない」
「黒に囚われとるんや。お前が気づいてやらんと」
山田が振り返り目を合わせてくる。信じたくない、そんな光が浮かんでいた。
黒なのがばれたらどうなる? さっきの男のように相反して、山田を失うかもしれない。
それだけは嫌だ。
「逆だよ」
一番の嘘吐きと言われたのだ。ならば役目を突き通してやる。
「誰よりも上手く嘘をつける」
例え真実だとしても信じられなければ意味がない。古代に記されたギリシャ神話でも、
未来を知る事が出来たが信じてもらえない女性がいた。彼女は絶望の未来を知りながら何も救えなかった。
「大概にせえ。そんなことして楽しいんか」
「こっちの台詞です。俺だけならいい、なんで山田まで騙そうとするんですか」
「お前がやっとるんやろ!」
「いい加減にしてください」
向こうが声を大きくすればするほど有利になる。間に立った山田が臨戦態勢で構えた。
目を見開いた柳原が菊地のポケットを指差して叫ぶ。
「違うなら汚れてない石見せてみいや!」
言葉ならいくらでも騙せる。けれど物は違う、一瞬体が震え、ポケットの中に手を突っこんだ。

60 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:36:20
握った石が暗く光っているのは知っている、布越しだから伝わらないだけだ。
山田が見ている。何にも関わっていない透明な目線が責めているようだった。
後ろめたい気持ちを隠すためもう一つの手をポケットに隠すと、触り慣れた感触がかさりと音を立てる。
嘘の証拠が見つかった。口元を歪ませないように耐えながら、絵が描かれたメモ帳の切れ端を握る。
本物の石が発する光が洩れないよう右手で包み込んでから、ツァボライトの光を思い浮かべた。
「何でや」
次の瞬間の状況はこうだ。
柳原は信じられない様子で息を飲み、後ろで怪我の痛みに耐えていた平井が目を見開く。
一瞬だけ安心した山田がアメリカザリガニの二人を失望の眼差しで見つめ、
左手を差し出した菊地が堪えきれずに口端を吊り上げた。
掌に乗っていたのは本来の光を偽った二つの石。相手に知らされてない能力で作り出した偽物だ。
勿論山田は菊地の具現化能力を知っているが、絵を描かないと出現させられない欠点も知っていた。
そして、菊地は石の絵を描いたことを知らせていない。
「偽物や」
いくら柳原が真実を告げても届かない。当たり前だ、相方を信じたくない人間がどこにいる?
仲が悪いならともかく、周知の事実としてお互いを好いている彼らが疑い合えるはずがない。
「休んででいいよ」
優しい笑顔が菊地の感情のどこかを握り潰す。初めて眉を寄せた菊地の動揺が伝わることはなかった。
それがいいことなのか悪いことなのかは分からない。
渦巻いた風が山田の体を包み、空気の動く音が建物同士に反射しながら空に昇った。
舞い上がった木の葉が夜空の星に焦がれた時、容赦ない風の塊が走る。

61 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:37:02
浮いた柳原を受け止めた平井もろとも吹き飛ばすために第二の風を放つが、
角度をつけた植物の盾が風を拡散させた。
柳原を後ろに引かせてから、植物を握って山田の方に向かってくる。
近づけるはずはない。風を刃状に変形させれば植物の盾でさえ壊れる。
上下に分かれた盾を風で飛ばすのと同時に、自らを風に乗せた山田が慣性の法則を利用し、
いつもより破壊力のある拳を平井のみぞおちに打ちつけた。
会得した空手に加えた衝撃を食らえば正常な大人でもかなりのダメージだ。
その上菊地に攻撃されていた平井にとって決定打になるのは当然だった。
体力の限界は越えているはずなのに。
平井は倒れず、変わらない目つきで、山田越しの菊地の内面を覗き込む。
傍観者に成り下がっていた菊地は自嘲し、声を上げて笑いそうになるのを必死に堪えていた。
「楽しそうやな」
いつのまにか横に立っていたのは柳原だ。平井が落とした棒状の植物を持ってはいるが、
戦おうともせずに菊地を見下ろしていた。笑みを消した菊地は睨むわけでもなく相手を見上げる。
「相方騙しとるのに」
「質問していいですか?」
「は?」
「人を騙すのが好きなんですか?」
「嫌いに決まっとるやないか!」
「俺もです。だったらわかるでしょう」
楽しんでないことくらい。続く言葉を胸にしまい込む。
ため息をついた柳原は、顔に後悔を滲ませながら、手に持った棒を振り上げた。

62 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:37:53
熱でぼやけた頭では対応出来ない。山田もこっちの状況には気づいていないようだ。
非現実的な世界で次の場面を待つ。
高く上がっていた棒が根元から切断され、長い方が地面に引きつけられた。
ゆっくりと落ちる棒は手を伸ばしても届かない。
かすかに残った精神力で作り出した水を伸ばし、木に巻きつけて引き寄せる。
状況を理解していない柳原の頭に少し短くなった棒を叩き付ける。意識を手放そうとする柳原は、
倒れる寸前、菊地の持つ平井の武器を凝視した。相方の武器でやられた彼は感情を潰されていたはずだ。
横たわる柳原を見ないようにして、平井と対峙する山田の元に向かう。
棒が切断されたのは山田の所作だ。証拠に、壁に痛々しい鎌鼬の跡が残っていた。
お互いが強いから本当に必要なときだけ助ける。相方の力を信じ、暗黙の了解としていた。
構い構われる能力でなくて本当によかった。アメリカザリガニのような関係で、
しかも菊地が攻撃出来ない立場だったら、何も出来ない責任感に押し潰されてしまっただろう。
山田と違って格闘技をやっているわけでもないので肉弾戦も不向きだ。
信じているからこそ放っておける、この微妙な感情を誰かに分かってもらえるだろうか。
風は草を刈るだけに使い、あくまで生身で戦おうとする山田。
対して、防御しきれないからしかたなく植物を使う平井。
疲れを滲ませた平井が柳原の様子に気づいたのは数秒経ってからだ。
「ヤナ!」
攻撃する対象を無視して柳原の方に向かう。意識がない柳原の傍らにしゃがみこみ、
すぐそばにある植物の棒を確認した。今まで怒りを隠していた平井が、
無作法に菊地を睨み歯を食いしばる。立ち尽くす菊地に向かって植物を伸ばした。

63 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:38:36
今までで一番強い風が菊地の肩を掠る。
吹き飛ばされたのは平井だけだ、確認してから振り返り菊地が息を飲む。
怒りの感情を持っているのは向こうだけではない。
相方を狙われたことで山田の何かが切れてしまったらしい。菊地でさえ怯む、
腹を括った表情が風に纏われ、伸ばす手は平井に向けられていた。
すぐに異変に気づく。植物ではつけられないはずの切り傷が山田の頬を走っていたのだ。
生々しく血を流したそれをよく見ると、破れた服の内側からも赤い傷が覗いていた。
突如の強い風に目を覆った菊地がまた見ると、首の横に真新しい傷が出来ている。
嫌な予感で鼓動が速まる。強力な力はいずれ身を滅ぼすのだ。
あまり欠点がないはずだった山田の力は、操作しきれないせいで主人の体を傷つけている。
くしくも二人の力は強すぎた。それでも菊地の方がまだ、殺傷能力が低かった。
二つの能力があるから欠点がなくなっただけだ。
山田の力は躊躇いさえなければ誰でも殺せる。鎌鼬を喉元に出現させれば終わりだからだ。
しかし彼はそれに魅せられずに自分自身の力を使っていた。与えられた力ばかり使う菊地とは違う。
箍が外れればどうなるかは誰にでも分かるだろう。
山田は菊地を守るために日ごろ抑えていた力を解放し、相方のために怒る平井と、
自らが傷ついても戦おうとしている。取り残されたのは菊地だけだ。
矛盾した傷を作り続ける山田を見て感情が動かないほど壊れてしまっているわけではない。

64 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:39:46
ただ、彼は独特な感覚を持ちすぎていた。
すぐに意見を変えて状況を抑えようとしても感情の説明が出来ないだろう。
けりあげた罪悪感を再度手にするには決死の覚悟が必要になる。
てのひらは水や血で汚れて、受け止めるほどの強度を保っていなかったから。
彼の言い訳は誰にも届かない。なんとか最初の一文字が届いても反感を買うだけで終わりだ。
唯一理解してくれる山田が頼れないから自分だけで戦ってきた。
だから、今の山田を見ていることは出来なかった。
包まれた風を突破して山田の肩を掴む。数ヶ所が切られたが痛みはなかった。
熱でぼやける目線を無視しながら握る力を強める。
風が弱くなり辺りに静寂が戻った。月が傾き隠れたせいで光が弱い。辺りの壁には多数の切り傷があり、
巻き添えを食らった平井も額から血を流していた。
「これ以上手を出さないでください」
山田が口を開く。頬に流れる血を拭いながら右手を伸ばす。柔らかい風が平井を包んだかと思うと、
抉られたはずの右肩と割れていた額が完治していた。
風で怪我が治るとは思っていなかったのだろう、驚いた平井が肩を摩る。
浮かんでいた怒りが消えた。何か決心したようで、手に握る植物を握りしめた。
「そいつをそのまま帰すわけにいかん」
対象の菊地は熱にうなされて思考が鈍っている。だから平井の使命感にも気づかなかった。
現状況が早く終わるのを願うだけだ。

65 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:41:04
「信じんでもええ、俺はそいつを元に戻したい。やから」
植物を構え、真っ直ぐな感情を向けた。
「戦う」
対して面識のない相手のため、何故ここまで体を張れる? 疑問が渦巻くが答えはない。
山田は少し戸惑ったようだったが、ため息をついて風を作ろうとした。攻撃する前に思いついた顔をする。
平井の体が浮き、数メートル離れた場所に運ばれた。綺麗に着地した平井の方に向かって山田が走る。
植物を構える平井の前で身を翻し、風で背中を押して菊地の方に向かってきた。
「後ろ向け」
言われた通りに背を向ける。肩の下に山田の腕が回され、足が地上から離れた。
抱えられるようにして空を飛んでいるのに気づいたのは、呆気に取られた平井が空を見上げていたときだ。
夜に隠れて姿は見えない。最高速度で空を滑降し、手ごろなビルの屋上に舞い降りてから辺りを見渡した。
都会よりも弱々しい夜景が近い。それ以上確認出来なくなった菊地がコンクリート上に座り込んでしまう。
駆け寄るわけでもない山田が不機嫌そうに顔をしかめた。
「何で勝手に行動した?」
何も答えられずに菊地は黙り込む。意識が朦朧としていて話せそうもなかったのもあった。
呆れたようにため息をつく山田は、自らの頭を撫でながらそっぽを向く。
このお人よしは。いつか切り出したおかしな会話にも調子を合わせてきたし、
聞きたいことが山程あるはずなのに尋ねてこない。
例え菊地の石が闇に包まれていることを知っても怒らないかもしれない。
屋上ぎりぎりに立って夜を見渡し、菊地が話し出すのを待っているだけだ。
急に振り向く。下からの自然な風にあおられて髪が揺らいでいた。

66 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:41:45
「どんなことがあっても俺はお前を信じるから」
まるでそれが当然であるかのような気のない声色。菊地が反応するより先に近寄り、
建物内へ続くドアへ向かう。鍵が掛かっていたらしく数回ドアノブを回し、情けなさそうに頭を撫でた。
「飛んでくぞ」
指示された菊地が屋上の端に立つ。逆の端に立つ山田が助走をつけ、
先程と同じような体勢で空に飛んだ。風に呷られた菊地のジャケットが揺れる。
見下ろした街に落ちたのは偽物の石でも本物の石でもない。どこから出たか分からない水滴が一粒、
二人が確認しないまま消えていった。無表情な菊地の目線は霞んでいる。
久しぶりの後悔はくだらない考えでごまかす。
いつか山田の背中に羽が生えるかもしれないな、流石に天使の羽は気持ち悪い、
偽造した石を売ったらいくらになるだろうか、もし高く売れればいくらでも金儲けが出来る。
明日になれば忘れて同じことを繰り返すだろう。山田がいない場所ならいくらでも……
ぼんやりとした意識の中で予想できるのかが分からない未来を抱え、
ぎりぎりで意識を紡いでいた水の糸が、切れた。

End.

67 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:45:20
終了です。読んでくださった方有り難うございました。
菊地さんが操られているかどうかは、
いつここを主に書いている◆SparrowTBEさんにお任せしたいと思います。
短編にしにくい話で申しわけありません。失礼します。

68 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 14:19:31
大切なこと言い忘れてた
以前感想くださった方、有り難うございました。

69 :名無しさん:05/02/15 20:22:04
>>47-67
新参者さん乙です。とても面白かったです。
菊地さんがかなり怖いですなあ。

70 :名無しさん:05/02/15 20:22:33
大作乙!
流れが二転三転するのでハラハラしながら読みました。
本気モードのいつここ、強っ!

71 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:24:10
こんばんは、ブレスです。本日お届けするのはロンブー過去編ラスト・息抜編です。
しばし駄文にお付き合いください。


〜回想・戦の後で〜


亮の脳裏には、まだあの時の記憶が残っている。


亮は困っていた。
この人達の家を知らない。
仕方なく、自分の家へと運ぼうか。そうも思ったが、また中本と石澤に襲われるのは困る。
とりあえず、公園のベンチに座る。
「ふぅー・・・。」
一息ついた。

ふたつのベンチに、男が5人座っている。
ひとつには中本と石澤が横たわり、もうひとつには亮を挟んで上田と有田。
「どないしよ・・・」
両は、今日何度目となるこの言葉を漏らした。
もう、太陽が赤く滲んでいる。
「・・・・・・」
皆、眠りについたままだった。
それだけあの戦いは激しかったのだろうか。
亮の体ももう限界だった。意識は、だんだんと薄れ始めていた。

72 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:24:54
――――ぴくっ。
「魂消ったぁーーーっ!!!(びっくりしたぁ!)」
「うわぁぁっ!!」
亮はびくんと跳ね起きた。
隣で上田が物凄い勢いで叫んでいたからである。
「何が起こったとやて思ったわ!!(何が起こったのかと思ったぜ)」
「はっ??」
「あれ・・・、俺なんばしとったかな?(あれ・・・俺何してたっけ?)」
「・・・上田さん?」
「あ?」
「・・・・・・なんて言ってるか分かりません。」
「・・・あぁ・・・」
「・・・・・・方言ですか?」
「・・・・・・そうだ」
「・・・・・・そうですか」
「おぉ・・・・・・」
暫くの沈黙。亮は亮で軽いショックを受けているみたいだった。
「あ、上田さん」
「なんだ?」
「あの・・・、有田さんお願いして良いですか?」
「・・・どう言う意味だ?」
「あの・・・ですね、家まで送っていってあげて欲しいんですよ」
「ばぁー?そっば俺がせぇてや?!(はぁ?それを俺がやれってか?!)」
「は?」
「俺なんもしてねーけど、すっげー疲れてんだぞ・・・」
「・・・そうすか」
一瞬の沈黙。

73 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:26:13
――――どさ。
「・・・・・・え・・・・・・」
上田は、自分にいきなりよしかかってきた亮を一度支えた。
そして、ゆっくりその場に寝かせる。
「・・・・・・寝てる・・・・・・」
亮がいつもの穏やかな顔で眠りに入っていた。
「何で俺がお守りばせなん・・・・・・(何で俺がお守りしなきゃいけないんだよ)」
普通ならば、最早日常で使うことも少ない、故郷の言葉。
それが亮の前で出ていると言うことは、きっと疲れているんだろう。
ふぅ、と一息つく。
「これからどうすっかなー・・・」



亮が気付くと、そこは車の中だった。
「・・・あれ?上田さんは・・・ここは・・・?」
「上田さん?・・・・・・いませんでしたよー」
「そうそう、亮さんしかいませんでしたよ」
運転席と助手席から、それぞれに暢気な声が聞こえた。
片方は川田、もう片方は照屋、通称『ゴリ』。
沖縄が生んだお笑い芸人、ガレッジセールの2人だった。

74 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:27:52
「・・・ゴリ・・・川田・・・」
ありがとう、と言おうとして亮はその前に
「俺しかおらんかったって事は・・・、テツさんとトモさんも?」
「テツ?」「トモ?」
2人が素っ頓狂な声を出していた。助手席の照屋が後ろを振り返る。
「亮さん、テツさんとトモさんって、テツトモですか?」
「そうやで」
「・・・うーん、いたっけ?川田ぁ」
川田はいつもの調子でうーん、と唸ってから、いなかったと返した。
「いませんでしたよ」
「そうなんか・・・」
ならば2人が自分を迎えに来る前に帰ったのだろうか?
石は、もしかしたらまだ汚れたままかもしれなかった。
だからこその不確定要素が怖い。
また襲われたらどうする?
相方だけでなく、ここにいる2人まで巻きこんだらどうする?
悩むのは俺で――――俺だけで良いのに・・・・・・。

75 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:29:38
「・・・う・・・ん・・・ょうさ・・・・・・亮さん・・・?」
「あん??」
亮は照屋の声で顔を上げる。なにやら変な声を出しながら。
「どうしたんですか?亮さん、考えこんで」
「亮さんらしくもないっすねぇ〜?」
照屋の心配と、川田ののほほんとした一言に、亮はふっと笑い。
「うるさいねん、お前らは自分の心配だけせぇ。
それと、川田!おい!一言多いねんっ・・・・・・」
なんかよくわかんないけど、また泣いてしまった。


白い煙が彼の視界を過ぎ去る。
そして、顔が水面下に沈みかけているのを
「何時までお風呂に入ってるのー?」
という、優しい声のお陰で止められた。


以上、ロンブー編でした。
駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
次回以降ははねる編中心になると思います。ちなみに方言はよく分かりません(汗)
それでは、おやすみなさいませ〜。

76 :名無しさん:05/02/16 08:19:42
アメザリの使命に燃える男達っぷりが素敵。戦闘シーンを臨場感たっぷりに書けるって凄いですね!
この世界では松竹はどんな位置付けになるんでしょうね。

77 :名無しさん:05/02/16 09:55:41
いつここの切なさに泣きました。
ありがとう。

78 :名無しさん:05/02/16 22:12:27
>>71-75
ブレスさん乙です。あの後のテツトモ気になりますね…また利用されちゃうんでしょうか

79 :名無しさん:05/02/16 22:16:41
方言わかんないなら書かないでほしい・・・。

80 :名無しさん:05/02/17 22:50:26
同じく…似せる努力をしてればまだ良いんだけど、
先に断っておくということは相当自信無いのでは…

81 :名無しさん:05/02/17 23:51:39
純粋に疑問ですが


なぜそこで方言?

82 :名無しさん:05/02/18 01:08:47
はねる編で方言で話すメンバーが登場するからじゃないですかね。

83 :名無しさん:05/02/18 03:47:05
>>81
自分なりに考えてみたが >>73で、「きっと疲れているのだろう」とあるから、
あまりの疲労につい、方言が出てしまった…という表現をしたいんだろう。

これが普段から少し熊本訛りのあるヒロツだったらしっくりきただろうけど、
常に標準語を話す上田でやってしまうと、どうしても違和感を感じてしまう。

84 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/18 07:25:09
皆様非常に申し訳ない。

方言ですが、一度調べましたが、地元の人から見たら正しいかどうか自信がなかったもので・・・。
ほんと申し訳ないです。

85 :名無しさん:05/02/18 22:51:53
方言をまねることはできない

86 :名無しさん:05/02/19 00:27:56
標準語付いてるし良いんじゃないですか?

87 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 16:27:08
ロザン編、続きを投下します。
よろしくお願いします。

「・・・つまり、この黒い石を俺は芸人に広めたらええんやな?」
「ああ。でも、ただ闇雲に渡してもしゃーない。頭の切れそうな芸人、それから、まだ石の存在とは無関係な芸人限定や。」
「頭の切れる芸人ねぇ。お前レベルに?」
「俺以上でもええし、人並み以上なら誰でもええ。」
パソコンに菅の書いてきたネタを落としながら、宇治原は答える。たった2人だけで黒い石を持っていても、芸人は掃いて捨てるほどにいる。埒が開かない。だから宇治原は今は静かに潜伏し、黒の力を広めるという点に重点を置いたのだ。
菅は一度だけ、黒の力を宇治原に見せてもらった。強く、魅力的な力。芸人である以外に、楽しめることを見つけたと思った。
「自分ますおかの岡田さんのイベント出たやん。ますおかに渡したら?」
「それは俺も考えてる。特に増田さんは、頭ええからな。」
「プラン9はアカンよな。大卒の芸人がええんかなぁ。」
「誰でもええ。とにかく、早よ黒サイドの力を強化するこっちゃ。」
この前プラン9と出くわしたときに、分かっていた。浅越は黒の力を使いこなすことに失敗した。しかし石の存在は把握している。先手を打たないと、邪魔される可能性が大きい。
ゆっくりと菅を振り返った宇治原は不敵に笑い、言った。
「最後に笑って立ってるのは、俺らや。」


88 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 16:45:35
ただ楽しそうではあるけれど、菅には終着点が見えなかった。どうすれば黒の勝ちなのか、最終的にどうすればいいのか。
「なぁ、お前はどこを目指してるん?」
宇治原に問う。すると宇治原は1枚の紙を差し出す。それには芸人の名前と、今所持しているであろう石がぎっしりと書かれている。
「これが現状や。俺が調べた限りでは、すでにこれだけの芸人が石の力を手にしてる。赤字が黒の力を持ってる人間やな。」
「へぇー、結構おんねんな。で?」
「この紙にはまだ登場してない、でも世間では1番といっても過言ではないくらいポピュラーな石がある。それを、俺らは白の力を使う芸人よりも早く手に入れなアカン。」
「この紙に登場してなくて、ポピュラーな石ねぇ。」
「ダイアモンド。」
宇治原は言い切り、楽しそうに話し始める。
「ダイアモンドの力は、まだどれほどのモンか分かってない。でも、どんな石よりも強くて、高貴な力を持ってると黒の石は言ってる。将棋で言うたら王将、大富豪ならスペードのエース。チェスなら、キング。」
「王、か。それに俺らがなる、と。」
「それはどうかは分からん。けどな、持ってたら勝ち。すべてを支配できる。」
支配。その言葉は菅を大きく後押しした。石を、芸人を支配できる。勝ち組になれる、奇跡の石。それならば、絶対に欲しい。
「よっしゃ、じゃあ手始めに、バッファローの竹若さん辺りから攻めてみようかな。」
「それともう一つ。攻めるときは俺と一緒に行動してくれ。どうやら、俺とお前が一緒やないと、マスコバイトの力は使えへんらしいからな。」
「分かった。」
黒の石の力に魅せられ、ロザンの2人は完全に本気になっていた。そして、それは黒の力の拡大を示していた。


89 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 17:21:25
「おはようございまぁす。」
珍しく一緒に楽屋入りしてきたロザンに、先に来ていた久馬が怪訝な表情を浮かべる。気付いていたがそれに構わずに2人が前を通り過ぎようとすると、久馬は宇治原の腕をつかんだ。
「もう始まってるんか?」
「なんなんですか、唐突に。」
わけが分からないといった表情でそう問い返した宇治原に、久馬はあっさりと掴んだ腕を離し、笑顔で言う。
「振ってんねんからボケろや。」
「あー、またギブソンの考えたゲームですか?っていうか、急にそんなん言われても出ませんよ、俺。」
笑顔の応酬。その奥には、石の力をバックボーンに置いた駆け引きが見え隠れしている。簡単に手の内を見せることは出来ない。お互いが探り合っている状態。
「そうやねん。オモロイから楽屋で流行らせよーかなぁ思て。」
「じゃあ今度から菅に振ってください。俺、とっさのボケとか出来ないんで。」
「はぁ?なんでやねん。たまにはお前もボケろや。」
「お前なぁ、俺がそういうの向いてないって、一番知ってるやろ。久馬さん、俺、ホンマにええボケとか無理ですから。」
「分かった。じゃあ次からは菅に振るわ。」
「お願いしますよー。」
会話をそこで切り上げて、2人はさっさと久馬の元から退散した。

90 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 17:26:49
自分たちの楽屋に入るなり、菅は舌打ちする。久馬にカマを掛けられたことに、気分を害したのだ。荒っぽく鞄を置くと、宇治原に優しく肩をたたかれた。
「あんなことでイラっとくんな。軽いジャブやぞ。」
「やってやー、笑って声かけたりすんねんぞ。ムカツクやんけ。」
「すぐにそんなんできんようになる。俺らが黒の力を使い始めたら、簡単に潰せるんやから。」
「そうやけど・・・」
これは意外に菅の闘争心に火がつくのが早い。宇治原は冷静に諭しながらも、早く先手を打たなければと思った。昨日岡田にメールを打ったら、すぐに返事がきた。週明けにでも4人出会えるという。
人のいい岡田は、先日のイベントで親しくなった宇治原に対して、何も疑問も抱いていない様子。これは案外スムーズに、増田も巻き込むことが出来そうだ。
明後日は竹若と出番が一緒になる日。さっきの感触から、まだプラン9のメンバーは探りを入れている段階だろう。そう急激に動き始めるとは思えない。芝居が一緒でも、まだ石のことは話していないはずだ。
けれどプラン9が動き始めるのも時間の問題。他の芸人にも、もっと黒の石を配っていかなければ。
菅は不快感を露わにしていたが、もちろん宇治原も久馬のジャブを不快に思っていた。出る杭は、さっさと打ってしまいたいと。そして抗えば、本気で潰してやると。
「なぁ、浅越をもう一回黒側に引き戻すことって出来ひんの?」
「それは俺も考えてる。内側から潰すのが、1番効果的やからな。」
(もちろん始まってますよ、久馬さん。)
宇治原は黒の石を見つめ、冷たい笑顔を浮かべた。宇治原の頭脳コンピューターは、目障りな存在、プラン9を潰す方向でものすごい速さの活動を始めていた。残酷に、再起不能なほどに潰すために。

今日は以上です。プラン9ももう少し絡んでくるカタチになりました。
ありがとうございました。

91 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 17:29:56
90:出会えるという⇒で会えるという

入力ミスでした。失礼致しました。

92 :名無しさん:05/02/21 22:55:21
乙です!
ロザン・・・やっぱりしたたかですね(笑)
文章が読みやすくすごく良いです!
続き楽しみにしてます!

93 :名無しさん:05/02/22 12:16:06
たまには

94 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/02/23 00:42:14
22さん、ダイアモンドについては過去にしたらばの掲示板の方で色々議論されたので、そちらの方も見てはもらえませんでしょうか。
恐らく話の根幹に関わる事なので・・・・・・

95 :クルス:05/02/23 20:22:04
突然すいません。ハロバイの話を投下しようと考えている者ですが…
時間はカリカVS品川庄司&ワッキーの後の話なんです。
これはやはりその話が終わるまで待ったほうが良いんでしょうか?

96 :名無しさん:05/02/23 20:38:37
まずsageれ。話はそれからだ。

97 :“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY :05/02/23 20:44:10
失礼します。
以下キングオブコメディ黒への布石話の高橋編です。


-暑い
久々に晴れて外は小春日和といった感じなのにTV局の中は暖房が効きまくっていた。
厚手のパーカーを着ているせいか余計に暑い。
高橋は自動販売機を探して歩いていた。
廊下から奥まった所にある休憩コーナーのような所でやっと自販機を見つけて
缶ジュースを一本買う。
静かな廊下にやけに大きく缶の音が響く。
ベンチに座って飲もうとテーブルの上にジュースを置くと自分の背後にあるドアから
声が漏れてきた。
「…がまた石を探せって…」
ドアの方を向くと細く隙間が開いていた。
高橋は、ドアの方に行き覗き込もうとしたが隙間が細くて中は見えない。
声からすると若い男のようだ。
「石」とはあの石の事だろうか、高橋はとりあえずドアの横に立って聞き耳を立てる。


98 :“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY :05/02/23 20:59:57
「下の事も考えろっつーんだよ」
「見た目とかは?持ち主とかはいんの?」
「全然わかんないって、力だけはわかってるらしいけど」
廊下が静かなせいか妙にはっきりと声が聞こえる気がする。
「そんなの見つかる訳無いじゃん。でもどんな力なの」
「なんか、死んだ人間と話ができるとか、生き返らせることができるとか」
「本当かよ?確かにすごい力だけどそんな力どうすんだよ?」
「上が…輩を…」
高橋はドアから離れて携帯を取り出し時間を確認した。
もう収録の時間が迫っていた。
にわかには信じがたい話だが、最近自分の身の回りで起きている出来事を考えれば
非現実的だと一言で片付けられない気がした。
[上」という言い方をしていた事から考えると、白側ではなく黒ユニットと呼ばれる側の
事なのだろうか。
―黒側の情報かもしれないし、後で渡部さんにでも話してみるか…
そう思いながら高橋はスタジオに向かって歩き出した。
廊下の向こう側からこちらに向かって足音が響いてくる。
石川が廊下の角を曲がってこちらの方へ歩いてきた。
「あれ、今日出るんだっけ?俺、先行くよ」
高橋のお守りの中の石が警告するように淡くまたたいた。
高橋がその事に気付かなかったのは分厚いパーカーを着ていたせいだけではない。
「…また後で…」
高橋の背中を見送った石川は口元だけで笑った。
「焦り過ぎだよ」
石川はテーブルの上のジンジャーエールの缶を開けてゆっくりと飲み干した。




99 :“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY :05/02/23 21:06:19
以上です。
名前が長すぎて入らなかったので恥ずかしいタイトルだけにしました。
今野編もいっぺんに書きたかったのですが、また週末にでも書きます。
>>95
クルスさん、自分は終わってからの方が分かりやすいと思います。
ハロバイにどんな力があるか楽しみです。


100 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:35:51
enemy or friend?
>>15 続き

「庄司!!」
脇田が叫んだ。
しかし、今の庄司の耳にその声は届かない。
脇田はあの時の庄司の力を思い出し、背筋が凍る思いだった。
殺人的な力・・・今は石が暴走していないとはいえ、庄司はその力を自分の意思によってコントロールできないのだ。

「奪うべき石が一つ増えたな!」
林は庄司に向けて風を放つ。
しかし、庄司がダメージを受けた様子はない。
完全に感情を失った目でまっすぐ林を見つめ、近づいていく。
いつものあの人懐っこい笑顔は完全に消えている。
今の庄司の放つオーラは、まるで死者を迎えにいく死神のそれのようだ。

「な・・・なんなんだ?!」
なんとか庄司を止めようと、林は風を乱射する。
どれも間違いなく当たっているのに、全く庄司にダメージはないようだ。
むしろ、力の使い過ぎで林が疲れ切っている。

庄司がとうとう林の前までたどり着く。
「やめろ・・・やめてくれ・・・!」
ゆっくりと手を伸ばし、林の首を掴む。
「庄司やめろ!!」
脇田は叫んで庄司の方に駆け寄ろうとするが、まだストロベリークォーツの効き目が切れないらしく、足が言うことを聞かない。
「ぐ・・・っ」
庄司は林の首を掴んで上に持ち上げ、そのまま軽く右へ放り投げた。
林はドラム缶に体をぶつけ、動かなくなった。
「林!!」
「やめろ!!」
家城と脇田が同時に叫ぶ。

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