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もし芸人に不思議な力があったら2

1 :名無しさん:05/02/10 19:26:11
現まとめサイト
http://geininstone.nobody.jp/


・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってます
・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドル・トリップを使用する事を推奨
 <トリップの付け方→名前欄に#(半角)好きな文字(全角でも半角でもOK)>
・既に使用されている石、登場芸人やその他の設定今までの作品などは全てまとめサイトにあります。
書く前に一度目を通しておいてください。

255 : ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:20:01
 ギターを爪弾く樅野が一音はずした。藤田が思わず顔をあげたら、バツの悪そうな樅野の表情とぶつかった。
「はずしましたよネ?」「いいや…まさか」薄ら笑いで言葉を交わして、その後、大きな声で笑った。その拍子
にベースを弾く藤田の手元も狂った。いっそう笑えた。
 ただし笑いながらも、藤田は彼の相方のことを心配していた。20分ほど前にこの控え室からフラリと出て行
ったきり、戻らない。相方が20分戻らないくらいで心配するなんて、なんと過保護なコンビだろうと思われる
かもしれない。
 今日は、彼らトータルテンボスがボーカルとベースをやっているバンドの深夜のライブ。しかも不慣れな会場
だということで、大村が迷っている、もしくはどこかを探索しているという可能性も無いとは言えない。
 ただ迷っているのであれば、まだいい。むしろ迷っててくれ、と藤田は念じていた。迷っているのではなく、
まっすぐ控え室に戻ってくるところを『何者かに』『邪魔されて』いるのであれば、甚だ問題だ。…もっとも、
もし迷っているのであれば「藤田君、ワタシが居るこの場所はいったいどこなのかね!」と相方の横柄な口調が
聞こえてくるであろう携帯電話が、ちっともちっとも鳴らない。ということは、藤田の希望的観測は外れている
のだろう。だからこそ、藤田は20分戻らない相方を心配している。
「藤田、そういえば入ってきた時から、そんなスウェット履いてたか?」
 藤田の格好を眺めた樅野が、不意に声を掛ける。彼らのバンド「ソーセージ・バタフライ・パスタ・フェス
タ」のギターであり独特の詩の世界観を紡ぎ出しているのが、この樅野である。ついこの間、チャイルドマシー
ンというコンビを解散したばかり。ちなみに樅野の現在の肩書きは作家。元相方の山本はピンで芸人を続けてい
る。


256 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:21:24
「え?なんすか」
「おまえさ、今日の服、イケてんの?」
 くくくと笑われて真っ赤になりながら、藤田は必死に弁解の言葉を探す。確かに、原色使いの多い彼のコーデ
ィネートの中、パジャマ代わりのようなグレイのスウェットは浮いている。
「ち、違うんすよ!今日ジーパン履いてきてたんです!すっげイケてるカッコしてましたよ!」
「何?漏らしたの」
「違いますって!大村の悪戯ですよ。アイツ、俺の座る椅子にシュークリーム置いてやがったんです。俺、気ぃ
つかなくて、座ったらベチャッて中のクリームが」
「シュークリーム?」
「余計に作られてた“辛子入り”のヤツです」
 あぁ、と樅野は肯く。芸人のライブのクイズコーナーなんかでよく見かける、ロシアン・ルーレットの小道具
だ。大勢がシュークリームを口に入れて、その中で“辛子入り”シュークリームを食べているのは誰でしょう、
というアレ。
「コントの衣装でたまたまスウェット持ってたんで、とりあえず着替えてきたんですけど…」
 その後、まっすぐこのライブ会場に来たということなのだろう。笑う樅野に憮然とした表情を返してから、藤
田はちらりと時計を見上げた。大村がこの部屋を出てから、30分近くが経過している。藤田はひとつ息を吐く
と、ベースを置いて立ち上がった。
「あのぉ…樅兄、オレ、ちーっと出てきます」
 藤田の声掛けに、樅野はギターから顔を上げぬままに応じる。
「おう、大村連れて戻って来ぃ」
 樅野も大村の不在に気づいて心配していたのだろうと知り、藤田は元気のよい返事をして控え室を出て行く。
その後ろ姿を見て、「大村に悪戯されたことなんか、もうすっかり忘れてるんやろうなぁ」と樅野は可笑しそう
に笑った。

257 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:23:38
 一方その頃、大村は目の前の相手を値踏みするような目で見ていた。それからおもむろに口を開く。
「…白ですか、黒ですか」
「え?」
 問われた相手は一瞬呆けたように間を置いて、それから、
「あぁ!俺?俺ね?俺、俺、白よ。白」
 ほらこんな感じ、と言いながら、男は自分の白いネクタイを指して見せた。その物にまったく説得力はないは
ずだが、そんな無邪気ともとれる仕種で、そのバックに居るのが『白』のユニットであることが信じられてしま
う…ような気もする。
 アンタッチャブルの山崎はそんな印象の男だ。
 ただし、なぜトータルテンボスがやっているバンドのライブハウスに山崎がいるのか。…ファンとして?顔見
知りとして?…それほど暇な身でもないだろう。
 山崎は何が楽しいのか(もしくは地顔と言うべきなのか)ニコニコと相好を崩したまま。
「でもさ、大村くん、正直、俺が白でも黒でもどっちでもいいでしょ」
「…どうしてそう思うんですか?」
「まぁこれは俺が勝手に思ってるだけだけどさ。白サイドの人ってのは、俺が敵かどうかを確かめたくて『黒
か?』って訊いてくることが多くってぇ。で、黒の側の人間は自分の味方かを確認したくて『黒か?』って訊い
てくる。どっちでもいいやーって人が『白?黒?』って訊いてくることが多いぃの」
 納得できるようなできないような、そんな自説を披露して、山崎は爽やか満面にニッコリと笑った。
「…『おまえは白か?』って訊く人もいるんじゃないんですか」
「いるね」
「そういう人は?」
「うーん…黒から改心した人か、芸人辞めた人か?…もしくは、どっちかをスパイしてる人」
「スパイ?」

258 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:24:27
「そう。本当は黒側なのに白のふりしてるとか。その逆とか」
 大村は意外だと思った。各ユニットにスパイがいるという話は初めて耳にしたが、もちろん争いのあるところ
には付き物の話であろうから、それ自体はさほど驚くことではない。そのことを山崎が知っていた、気にしてい
たということに驚いたのだ。なんとなく、そういったことには鈍感、もしくはとんと無頓着に見えていたから。
「…ってことは山崎さん、スパイに遭ったことがあるんすか?」
「それはいいじゃない!ま、どっちにしろスパイとかさ。そういう人は『おまえ白?』って訊いてくるような気
がする」
 山崎の言葉の真意を大村は量ることが出来なかったが、それは今は問題ではあるまい。
「まぁぶっちゃけ?白でも黒でもどっちでもいいって山崎さんの言葉はアタリです。それで…中立の俺に何の御
用で?」
 重要なのはそこでしょ?という言葉を眼差しに込めてみる。案の定、山崎は今度はニヤリと人を食ったような
笑みを浮かべて。
「そりゃ中立の人に持ちかける話ったら大体相場は決まってるでしょう」
 この流れで今更友達になってください、とかナイでしょ。
 そう言って笑う山崎を前に、大村はなんとなく腰から尻のポケットにかけて繋がるウォレットチェーンを幾度
も撫でていた。
 ジーンズのベルトに繋がるチェーンの金具には、透明感のある黄色をした石が割と無造作に繋がっている。そ
れがじわりと滲み出すように光を放ち始めたことに、まだ大村は気付いていない。
「仲間に入れって?」
「まぁそれもあるけど…俺が訊きたいことはそれとは別」
 いつもの不敵な笑いを絶やさぬようにしながら、大村は顔が引き攣るのを感じていた。
 なぜだろう。山崎はこんなに友好的な笑顔なのに。
「俺が訊きたいのは…君の石の能力が何か、だよ」
 なぜだろう。俺の心臓がドクドクと、こんなに落ち着かないのは。

259 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:25:23
「何やってんだアイツは」
 控え室を出た藤田だが、1分と経たないうちにトイレの前の廊下で立ち尽くす大村を見つけた。じっと睨むよ
うな目線。握り締めた片方の拳と、もう片方の手はウォレットチェーンを行ったり来たりしている。
(…あ!アイツ、石使おうとしてやがんだな?!)
 瞬時に勘付いた藤田は、そこから猛ダッシュで大村へと近付く。不測の事態に備えて、彼の片手もウォレット
チェーン――といってもスウェットには付けられないのでポケットに放り込んでいた――を手に取る。藤田の心
の焦りに呼応するように、薄い碧色の石がふっと光を放つ。
「おーむ!何やってんだよ!」
「うるせぇ」
 肩を掴むと、大村は藤田の手を振り切り、尚且つ押し退けようとする。その視線はまっすぐに据えられて、藤
田を振り返りもしない。
「うるせぇじゃねぇよ!お前、何やってんだって」
「藤田黙ってろ、向こう行ってろ。なんか胸騒ぎがする。あぶねぇかもしれねぇ」
「おい大村!!」
 大村の前に回り込んで、その両肩を掴んだ。大村の視線が、初めてまともに藤田を捉える。
「離せ!」
「“おまえ一人で”何やってんだよ大村!!」
「一人?!お前こそ何言って…」
 そう言って、大村は藤田の肩越しに視線を投げ掛ける。
 あたかも、そこに石を持った芸人が立っているかのように。
 そしてその顔は一瞬の後に、甘いと思ったシュークリームの中に辛子が入っていたかのような表情を上らせて。
「どこ行った?!」
「誰がだよ」
「居たろ!さっきまでそこに!」
「お前、俺が見つけた時からずっと一人だよ。何か睨んでたけど」

260 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:26:47
「んなわけねぇよ…居たんだ」
「だから誰が居たんだって」
「え?」
 改めて訊かれて、大村は即答するのをためらった。
 藤田の口ぶりによれば、山崎は『逃げた』のではなく『存在しなかった』もしくは『見えなかった』のだとい
うことになる。任意の者にしか見えずに惑わせる“幻覚”の類か。間違いなくそれを生み出したのは「石の力」
だろう。だとすると、その「石の持ち主」は2通りのことが考えられる。つまり、「山崎」か「山崎以外」かと
いうことだ。
 そして、うかつにそんな思考の過程を口に出すべきか、大村は迷ったのである。目の前に居て話をした山崎が
「幻覚」だったと気付かされたばかり。
 目の前に居る藤田が“本物の藤田”かどうか、大村には分からない。なにしろ藤田は、目の前の幻覚山崎が消
えると同時に現れたのだから。
「おい、大村?」
 黙りこくった相方を藤田が覗き込む。自分が“本物か”疑われているなんて、微塵も考えていない表情だ。
「…藤田」
「なんだね。神妙な面持ちだねぇ」
「石、持ってるよな」
「え?あ、あぁ」
 ホラ、と石を見せられ、大村はまたしばらく考え込む。さっきの山崎(の幻覚)は白いネクタイをしていた。
身体的特徴だけでなく持ち物までも忠実に再現するのであれば、石を持っている目のまえの男はホンモノの藤田
である可能性が高いとはいえ、確実な証拠にはならないだろう。
(どうすればいい?どうすれば、目の前のアフロ男が本物の藤田かどうかを判別できる?)
 普段はネタを考える時か悪戯を考える時にしか見せないくらい真剣な表情が、大村の顔に浮かぶ。
 すると、呼応するかのように腰の辺りにポッと熱が点ったような感覚がした。大村が改めて確認するまでもな
く、自分の石…薄い黄色の黄翡翠(イエロージェイド)が輝いているのだと知れる。

261 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:27:48
(そうか)
 大村はウォレットチェーンを手繰り寄せ、石を指先で確認した。この石があれば、藤田の正体を確認すること
くらいすぐに出来るはず。
「藤田。わりぃ、ちょっと俺、ライブ前でテンパってた」
「なに?」
「疲れてんのかもしんねぇ。ジュースを買ってきてくれたまえ」
 いつも通りの大村の様子に誘われて、藤田は眉毛を吊り上げる。
「おまえっ、そのジュース買いに行ってたんじゃなかったか。フザケんなよっ」
「…そういやそうだっけ」
 実際は控え室を出たところで山崎(幻覚)に行き会ったので、ジュースのことなどきれいさっぱり忘れ去って
いたのだが、大村はそこをサラリと流す。
「いいや。じゃあじゃんけんで負けた方が買ってこようぜ」
「…負けたら奢りか?」
 乗ってきた。
「望むところだ」
「よーし、やる気出てきたぞー」
 このノリの良さだけで藤田だと信じても良いくらいだったが、念のため、と大村は腰の石を発動させる。
「じゃーんけーん、しっ」
 大村の手は、チョキ。藤田の手は、パー。大村の石は一瞬キラリと光って、すぐにまた元の姿を取り戻す。
 負けた藤田があんぐりと口を開けるが、すぐに両手をぶんぶんと振り回して要求をかざす。
「さささ三回勝負!なっ。オゴジャンなんだから、それくらいアリだろう」
「…しょうがねぇな」
 大村の溜め息に口に出さぬ思いが乗っていることに、藤田は気付かないだろう。
「ようし、じゃんっけんっ」
「しっ」
 石がキラリと光る。大村・グー。藤田・チョキ。
「もういっちょ。じゃんけんっ」
「し」
 もう一度、石にきらめき。大村・グー。藤田・チョキ。
「はい、藤田くん三連敗」
 行って来い、とスウェットを履いた尻を叩きながら大村は念じた。
(来い、藤田。気付け、藤田。お前が本物なら)

262 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:28:30
「あッ!!」
 大村の願い通り、藤田はそのアフロ頭をもたげ、弾かれるように大声を上げた。
「おーむ、おめぇ、石使いやがったな?!」
(…やっと気付いたか)
 ほっと息を吐きながら、大村は「テッテレー♪」と間抜けな擬音を口にして、笑った。昔のドッキリ番組で種
明かしの時に流れたその短いフレーズは、同じテレビ番組を見て育った二人の間で、悪戯の種明かしを示す符牒。
 藤田が大村の石の能力を看破するかどうかが、この賭けの重要なポイントだったのだ。
「そうだよな、ちょっと考えりゃわかるんだよ!三連勝して余裕綽々な顔してるなんて、お前が石使って成功率
上げたからに決まってる!詐欺だ!…んで、何笑ってんだよ!」
 藤田ががなりたてるが、ホンモノの相方だと証明できた大村は笑顔を崩さない。大村の感情に藤田が気付くわ
けもないから、はたから見るとかなり奇妙なテンションの二人連れである。
「藤田」
「なんだね。ズルっこしたこと謝りたいのなら聞いてやる」
「俺の石の能力言ってみ」
「…謝らないのかよ」
 憮然とした表情ながらも、素直に大村の要求を聞き入れて、藤田は、
「今更説明させるって、何だよ。…自分か周りのヤツの“アクションの成功率を上げる”だろ。今はじゃんけん
で自分勝利の成功率を上げたってところだろうが」
 過不足なく大村の石の能力を説明して、これで満足か?という目を向ける。それに向けて大村は、至極満足げ
に微笑んで肯く。
 先ほどの山崎の幻覚は、「君の石の能力を訊きたい」と言った。それはつまり、山崎の幻覚を操る石持ちの芸
人は、大村の能力を知らないということだ。その人物が白か黒か、敵か味方か、そもそも何が目的で何故大村の
石の能力を知りたがったのかはさっぱり分からないが、藤田に化けることはハイリスクだったのだろう。彼ら二
人とも、正確な石の能力を知っているのは、今のところ本人と相方だけなのだ。
 大村は手を伸ばして、飼い犬を撫でるのと大差ない手つきで目の前のアフロを撫でた。この感触は間違いなく
相方…いや、この場合は、石を巡る戦いの中でも唯一絶対的に信頼できる、親友のものだと言えた。

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